中公文庫
怪しいPTSD―偽りの記憶事件

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  • サイズ 文庫判/ページ数 251p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784122052710
  • NDC分類 146.1
  • Cコード C1111

内容説明

二十世紀末のアメリカを席捲した、PTSDの治療方法とされる「記憶回復療法」。阪神大震災後の日本でもPTSD概念は市民権を得たが、アメリカでは「記憶回復療法」によって「蘇った記憶」の真偽を巡る論争が起き、精神分析自体も批判にさらされていた…。

目次

序章 聖書、または偽書
第1章 社会的事件となった「記憶回復療法」
第2章 記憶戦争
第3章 裁かれるセラピストたち
第4章 記憶回復療法とは何だったのか―逆分析する
第5章 精神分析批判―抑圧理論と因果論の危うさ
第6章 危ないPTSD概念の拡大
第7章 心理学書を片手に親にたかる子供たち―母親狩り

著者等紹介

矢幡洋[ヤハタヨウ]
1958年東京都に生まれる。京都大学文学部卒業。精神病院の相談室長などを経て、現在、矢幡心理教育研究所所長、臨床心理士、作家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

佐倉

9
「あなたの人生が上手く行かないのは幼少期に悪魔崇拝カルトの一員だった父親にレイプされたからだ」90年代の米国でそう診断された人々はこぞって過去の記憶を「思いだし」始め、次々と父親を訴訟しはじめた。この虚偽記憶に纏わる喧騒と論争を取り上げた一冊。精神医学の世界においてジュディス・ハーマンは敗北した。だが近年でも米国においてDSにすべての悪を仮託する狂騒は記憶に新しいし、日本でも親ガチャという言葉で親狩りは続いている。結局、僕たちに出来ることは他責の観念が魅力的なことを自覚して生きることだけなのかもしれない。2023/01/18

garth

3
「かつて精神分析にかぶれていた時は、トラウマだのアンビバレンスだのといったやたら大袈裟で深刻な話こそクライアントにとって本質的なものであり、そのような深遠なテーマについて語り合うことこそが「深い面接」であり、価値のあることなのだ、と信じていた。そのような異常なこと・並外れたこと・ドラマティックなことなどをクライアントに対して期待するのは、こちらの弱い精神のなせるわざにほかならない」「偽りの記憶」もまたセラピストと患者の共犯関係で生まれる。2010/02/14

YOS1968

2
米国を席巻した「偽りの記憶」論争をまとめている。非常にセンセーショナルな事件ではあるが、問題は心の問題の普遍化にあるのだと思う。心は傷つくこともあるがそこから立ち直る力も持っている。全てをPTSDなどという、ちっぽけな概念だけで語ろうとしてしまうことは、安易な思考停止であろう。一方で心的外傷の問題は、とても大切な問題であり、こういう問題は起きて欲しくなかった。2010/02/27

Ayanosuke

1
『原因と結果を一対一で結びつける単純化された命題は、宿命論的なニュアンスを持つようになり、人間を絶望させる危険性を持つ』(209ページ)2013/02/04

kobaatsu

1
おもしろかった。ただ「なぜ人はどうしようもなくしょーもない物語にはまってしまうのか」という問に対する答えは筆者がいうような安直なもののような気がして、そのへんが後半薄っぺらく感じた。や、でもすごくおもしろかったー。2010/02/10

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