出版社内容情報
蒙古襲来をからくも避けた中世日本は、その余波にゆさぶられ、新体制をめざす公家・武家・農民の三つ巴の活動におおわれ、来るべき動乱を予告する。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
58
蒙古襲来と表題が書いてありますが、蒙古についての中身は3分の一くらいであとは鎌倉幕府が終わるまでの状況が描かれています。天皇家の分裂、悪党の横行、楠正などが出てきます。太平記の世界ですね。蒙古襲来については、むかし網野先生の本を読んだのですが、難しかったことを覚えています。2015/05/17
Book & Travel
51
鎌倉時代後半、蒙古襲来から得宗政治の時代を経て、正中の変、幕府滅亡まで。執筆が1965年頃ということで表現に時代を感じるところもあるし、前巻より難解なところも多かったが、一遍や日蓮ら宗教家の活動や地頭と領家のせめぎ合いなど非常に詳しく、面白かった。力を持ち出す農民、台頭する悪党など、政治が混迷する中で、がめつく悪どく泥臭いながら、社会が大きく変化しつつあるパワーが感じられるのがこの時代の魅力(決してこの時代に生まれたいとは思わないが)。太平記と重なる終盤の壮絶の合戦も読みごたえがあった。2018/05/23
てつ
39
蒙古襲来というより、単に鎌倉時代中後期のはなし。庶民の生活や仏教の諸派の流れ、武士の黎明期に混乱など興味は尽きない。結局東西の政治的分裂は日本の歴史の中でなんだったのか、まだまだ一つにはまとまらない日本国なのでした。2020/10/26
MUNEKAZ
15
解説にもあるように、のちに顕密体制論を唱える著者が、日蓮や一遍といった鎌倉新仏教の主役たちを狂言回しにしているのが、何とも興味深い通史。元寇を転機とした戦時体制の恒常化が、得宗専制体制の矛盾を露わにし、幕府崩壊へと至る道筋が情感豊かに描かれる。もちろん最新研究から比べると古色蒼然という印象もあるが、同時に原著は敗戦からまだ20年という刊行のため、「神国日本」や皇国史観への強い批判に今の本にはない「思い」を感じる部分もある。そこを味と捉えるか、古いと思うかかなぁ。2015/11/25
takeapple
15
権門体制論の黒田先生による鎌倉時代後半についての一般向け通史。初版は1968年だけれど未だに古びない読み応えある内容。最近の権力の所在を中心にした中世史本にない魅力があるなあ。申し訳無いけれど呉座さんや亀田さんの本の面白さが全く分からないので。一般的には、農耕民以外へ注目したのは網野先生の小学館版『蒙古襲来』と言われているけど、黒田先生の本にもその記述もあるし、何より歴史を権力のありかによるのではなく、民衆の立場から書かれていることに共感する。学生時代以来30年振りの再読だけれど、流石だなあと思う。2019/04/21