内容説明
会社勤めをしていた頃の忘れがたい思い出「わが心の町 大阪君のこと」、小学生時代の不思議な体験「側溝のカルピス」、競輪の取材をしていた頃に出会った名選手へのオマージュ「鬼脚の涙」―懐かしく、切なく、甘くそして苦い記憶の数々を繊細な筆致で綴った珠玉の四十八篇。『絶対音感』『青いバラ』の著者による初のエッセイ集。
目次
わが心の町 大阪君のこと
側溝のカルピス
星々の悲しみ
貝殻虫
わかれて遠い人
鬼脚の涙
時をかける人
おシャカさまに近い人
遠距離の客
パン屋の二階〔ほか〕
著者等紹介
最相葉月[サイショウハズキ]
1963年、東京都生まれ。三歳から二十五歳まで神戸に住む。関西学院大学法学部法律学科卒業後、大阪の広告会社に三年間勤務。上京後は出版社、編集事務所を経て、フリー編集者兼ライターとして独立。『季刊子ども学』(ベネッセ教育研究所)では、子どもの逸脱や消費文化、異文化コミュニケーション、震災などに関する雑誌づくりに携わる。この頃より科学技術と人間の関係性、スポーツ、教育などをテーマに執筆活動を開始。97年『絶対音感』で第四回小学館ノンフィクション大賞受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
33
読みやすいエッセイ集です。週刊読売をはじめとしてそのほかのメディアに発表されたものを収めたものです。題名も何となくという感じが出ています。種田山頭火の俳句から来たもののようです。この筆者のエッセイがもっとあったら読みたいとおもいました。2014/10/28
団塊シニア
26
「わが心の町大阪君のこと」筆者が会社員時代の忘れがたい思いでを綴っており印象深く読後に余韻を残させる内容である、甘く切なく繊細なエッセイです。2013/05/26
yuki
5
10年ほど前に出たエッセイ集。この人の書くものはルポタージュでも急に情緒的になるようなところがあり、そこが危ういけれど魅力でもあると思っている。この本にも同じ印象を持った。少女時代の回想などは、一定の距離感をもって美しく語られている。しかし、いくつかの題で突然作者の主張が最前に出てきたり話が飛躍したりして、ぎょっとさせられることがあった。難点なのかもしれないが、筆が滑る感じに何故か気を惹かれる。また子ども時代の話を読んで、御影のお嬢さん育ちだったのかと納得するような気もした。2014/02/18
和草(にこぐさ)
4
初最相さん。エッセイとは知らずに借りてきました。側溝のカルピス、大阪君が印象に残りました。2013/01/13
こにいせ
4
他の書き手と比べて優れている点が二つ。筆者のエッセイを通読すると、「なんとなく」紹介されている・引用されている他の人の本を読んでみたくなるということ。これは編集者畑出身のなせる業か。もう一つ。その読書履歴に、非常にぶれ幅があるということ。『前島密自叙伝』『鍵盤を駆ける手』『利己的なサル、他人を思いやるサル』…どう、このラインナップ。この点は知識があるなんて御座なりな言い方ではなく、「人間として引き出しがある」という修辞で賞賛させて頂きたい。2010/03/05