中公文庫
夜の果てへの旅〈下〉

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  • サイズ 文庫判/ページ数 427p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784122043053
  • NDC分類 953
  • Cコード C1197

内容説明

遍歴を重ねた主人公バルダミュは、パリの場末に住み着き医者となるが―人生嫌悪の果てしない旅を続ける主人公の痛ましい人間性を、陰惨なまでのレアリスムと破格な文体で描いて「かつて人間の口から放たれた最も激烈な、最も忍び難い叫び」と評される現代文学の傑作巨篇。

著者等紹介

セリーヌ[セリーヌ][C´eline,Louis‐Ferdinand]
筆名。1894年、パリ西北方の都市クールブヴォワに生まれ、貧しさのなかで独学を続けて医師免状を得る。第一次大戦で騎兵軍曹として武勲をたて、復員後、国連事務局に勤め、各国を遍歴してから、パリの場末で医師を開業。1932年、本書で一挙に作家の名声を確立したが、反資本・反ユダヤ主義の立場からフランスの現状を痛罵した時事論集などのために、第二次大戦後、戦犯に問われ、亡命先のデンマークで投獄された。特赦で帰国したが、61年、不遇と貧困のうちに歿し、その墓石には“否”の一語だけが刻まれた

生田耕作[イクタコウサク]
大正13年(1924)、京都に生まれる。京大仏文科卒。京大名誉教授。平成6年10月死去
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

373
下巻に入って、上巻で見られた空間移動はほとんどなされなくなる。フェルディナンはパリの町はずれ、貧窮者たちが住まう地域で医師として暮らす。すなわち、下巻での「旅」は空間ではなく、内部に沈潜するものになるのである。移動はフェルディナンにとっての分身ともいうべきロバンソンに肩代わりされることになるが、その挫折はすなわちフェルディナン自身のそれに他ならない。そして、それはそのまま我々読者にも感染し、どうしようもないような虚無感に捉えられることになる。しかし、同時に虚無といい、虚脱といい、それらは作品の内質を⇒ 2021/11/13

扉のこちら側

73
初読。2015年1164冊め。【85-2/G1000】読んでいるのは下巻で合っているよね、違う作品ではないよねと思わず確かめてしまったくらい上巻とは文体が違っていて驚いた。フランスの「国賊作家」の衝撃のデビュー作という先入観があったけれど、青年の旅の物語で、そして旅の終わりの物語というやわらかい読み方をすると、醜悪な人の世も「そういうものだ」という一言で、なんとかやり過ごして生きていくものだと思えてくる。【第51回海外作品読書会】2015/11/28

NAO

71
何をやっても、どこへ行っても、貧しいものは常に虐げられ、馬鹿にされ、這い上がることもできない。そして、日常のどこかに、ひそかに、戦争の影が潜んでいる。長々と続くフェルディナンの遍歴は、どこにも希望がなく、何の夢もない。「僕らが一生通じてさがし求めるものは、たぶんこれなのだ、ただこれだけなのだ。つまり生命の実感を味わうための身を切るような悲しみ。」「夜の果てる日などありはしない」 2017/11/30

HANA

56
遍歴の果てにパリで医者を始めた主人公。戦場や植民地といったダイナミズムは無いが、相変わらず登場人物は片端からろくでもない人物ばかりであり、上巻では流されるばかりであったのとは対照的に能動的に動き始めた主人公も含め、それを露悪的なばかりに描いている。そんな中一際目を引くのがもう一人の主人公と言わんばかりのロバンソン。老婆を殺そうとして失敗し盲目になるわ、挙句の果てには…と本書を代表するような動きっぷり。戦場でもアフリカでもパリでも結局は人間のどうしようもなさ、絶望を絶望で煮込んだような濃厚な一冊であった。2019/10/03

ω

52
下巻は戦争とか貧困と少し離れて、主人公バルダミュの周囲で数々のトラブル発生ω 途中で気づいてくる、これは人生の話ダ。 人生は、退屈という自習監督に見張られた教室みたいなものだ。人生は登り道じゃない、下り道だ。堂々とくたばるために必要なもの、そいつは僕の力なんだ!2022/10/02

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