内容説明
生と死のきわどいつり橋をわたるように、高嶺を求めて氷壁にたち向かっていく先鋭的アルピニストたち。やがて彼らは雪煙のなかに消え去った…。名アルピニストたちの生と死を、限りない哀惜とともに検証する、山際ノンフィクションの名作。
目次
第1部 一瞬の生のきらめき
第2章 ザイルのトップは譲れない
第3章 未知の世界に向かって
第4章 山を愛し山に死んだ
第5章 夜明けの美しさのために
第6章 孤高の人生をめざして
第7章 いくつか越える山のために
著者等紹介
山際淳司[ヤマギワジュンジ]
1948年、神奈川県逗子市に生まれる。中央大学法学部卒業。80年、『ナンバー』創刊号の短篇ノンフィクション「江夏の21球」でデビュー。81年には『スローカーブを、もう一球』で第8回日本ノンフィクション賞を受賞。様々なスポーツを題材にして幅広い文筆活動を行い、ノンフィクション界に新しい風をもたらした。その後、小説なども手がける一方、ラジオ・テレビでキャスターを務め、スポーツブームの担い手の一人となる。95年5月没
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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gonta19
127
2018/1/10 Amazonより届く。 2019/6/24〜6/26 「江夏の21球」で有名な山際淳司さんが伝説的なクライマー、登山家を取り上げたエッセイ。加藤保男、森田勝、長谷川恒男、松濤明、加藤文太郎ら邦人の他にも、欧米人のクライマー達の山に対する姿勢が描かれる。山に登る意味を再考させられた。2019/06/26
♡ぷらだ♡お休み中😌🌃💤
69
山の日にちなんで。本書は、登山家にとって山で死ぬことは「幸福な死」なのではないかという主張のもとに書かれたノンフィクション。加藤保夫、森田勝、長谷川恒男、ヘルマン・ブールなどの登山家が取り上げられている。寒さ、地上の3分の1しかない酸素、強風、吹雪、それらを乗り越えようとして、氷壁に挑む。そして、ピッケルを振るい、ザイルを結び、氷壁を一歩一歩よじのぼる。死の危険を知りつつもなお、死の領域に足を踏み入れてしまう。そんな彼らの生き様に、命とは何だろう、人生とは何だろうと答えのない問いを考えてしまった。 2022/08/11
Shoji
51
昭和時代、山に命を賭けて実際に山で亡くなった男たちのドキュメンタリーです。なぜ、命を賭してまで山に登るのだろう。プロのクライマーは私たちとは違う価値観がきっとあるのだと思う。征服感、自己の存在の確認、誇りなど。私自身、山歩きを趣味としています。もちろん、命を賭してまで歩いてはいません。そんな私が山に登るのは、山登りなんて95%しんどくて、辛くて、苦しいだけのものです。ですが、残りの5%が超気持ちいいのです。その5%を求めて、死なないように元気に山歩きしたいと思います。良書でした。2020/08/19
にし
44
山に魅せられ散っていったアルピニスト達への追悼本。決して無謀な登山で命を粗末にしているのではない。山でしか味わえない何かが垣間見える本でした。芳野満彦さんが氷点下32度久しぶりに見る夜明けに涙しながら呟いた「氷の岩峰が一瞬にして形容のしがたい美しい真紅の絵の具でぬりつぶされる。山にいる喜びと旭光が魂の底に貫いた・・」山への畏敬とそこに身を置く喜びは誰にも止められないものなんだろうな。2014/03/08
T2y@
36
改題前のタイトルはなんと、「山男たちの死に方」 故人となったアルピニストたちの足跡と、壮絶な遭難事故の状況が綴られ、彼らの死生観に深く切り込んでいる。 本作が山際氏の遺作で、闘病末期に描かれた事をあとがきで知る。ご自身の最期と重ねていたのでせうね。2018/03/21