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中公文庫
廃墟大全

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  • サイズ 文庫判/ページ数 301p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784122041837
  • NDC分類 704
  • Cコード C1195

内容説明

戦争、災害、バブル崩壊に続くデフレ不況…。全世界に廃墟が再生産される一方で、郷愁や無常観を誘う対象として注目を集めている。無定形な時代が続く現在、文学、美術、建築、映画、写真、アニメに登場する無数の廃墟群を16人の気鋭の研究者が脱領域的に横断、徹底検証する。時空を超えて妖しい魅力を放って已まない廃墟の本質に迫った異色の評論集。

目次

ケープ・コッドの渚で―生物と人工物の巨大廃墟を擦り抜けるネットランナーたち ソロー以後のレッカー文学史
瞼の裏の宮殿―ポール・パークの記憶の聖墓
建築の「廃墟」、人体の「廃墟」―A・タルコフスキー『ノスタルジア』からD・フィンチャー『セブン』へ
死せる視線―写真の廃墟解剖学
廃墟のメタモルフォーズ―パリ、サン・ジノサン墓地―レ・アールの噴水の下に潜む、あらゆる死体を食らい尽くしてきた廃墟
十八世紀ローマの廃墟をめぐる覚書―ピラネージの時代
サー・ジョン・ソーンズ・ミュージアム―廃墟趣味と断片の美学
「ザ・ピクチャレスク」としての廃墟―十八世紀英国の美意識と人工廃墟
「廃墟」とロマン主義―断片が生い育つ ティーク、ノヴァーリスに見るロマン派の廃墟のモティーフ
フリードリヒ、ブレッヒェンにみる廃墟のテーマ―その美的仮装と擬装の計略〔ほか〕

著者等紹介

谷川渥[タニガワアツシ]
1948年生まれ。東京大学大学院博士課程終了。美学専攻、国学院大学教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

安南

35
文学、美術、建築、映画、写真等々に登場する様々な廃墟について、17人の著者達がそれぞれの視点で論じたタイトル通りの廃墟大全。図版も多く充実の内容。複数の論考に登場するピラネージという存在。あらためて彼の存在の大きさを思った。「写真は事物を廃墟化する」など廃墟という概念を隠喩として、または内的空間として解釈したいくつかの論が、それぞれに興味深かった。特に永瀬唯の『喪失の荒野』でのエヴァンゲリオン論がおもしろかった。これが編纂されたのは1997年。廃墟を語るには世紀末ほど相応しい時はない。2014/08/21

梟をめぐる読書

18
編纂された97年の時点で最高の執筆陣を揃えて出版された、充実の廃墟論集。しかもその殆どが書き下ろし。18世紀の代表的な廃墟画家ピラネージとその周辺を押さえつつ映画や写真について扱った章では「廃墟と死体」のアナロジーについても論及され、変わり種で中国のリアルな廃墟事情やエヴァンゲリオン論なども収める。お題がお題なだけにアクチュアリティには乏しいが、東京がじつは「廃墟を許さない都市」であり日本人は「廃墟を内面化しえない」と説く飯島評論が3.11以後の福島の問題にどう接続されるのか、じっくり考えてみたい。2015/07/07

misui

5
ざっと再読。ピラネージの重要性を確認しつつ、ピラネージに影響された建築家ジョン・ソーンの助手を務めたジョゼフ・マイケル・ガンディ(「イギリスのピラネージ」と称される)に興味を持つ。そして、日野啓三の言うように廃墟が「秩序とカオスの中間形態、というよりカオスへの還元過程の一時期の状態(…)そこで秩序とカオスの双方が触れ合って見える場所」、つまり宇宙の根源的なベクトルの露頭であるとするならピクチャレスクが求めた崇高美にも通じよう。廃墟が宇宙のドラマを体現するなら逆に宇宙は廃墟であると言うこともできる。2016/08/01

misui

4
再読。「ゲーテやシャトーブリアンが微睡を覚えた廃墟は、あくまでも異邦人の眼差しが映し出した廃墟であったということを忘れてはならない。彼らが、荒廃しきったローマよりは遥かに安定した故国をもつ高貴な旅行者にすぎなかったということを忘れてはならない。」(岡田哲史「十八世紀ローマの廃墟をめぐる覚書」)、「要するにドイツ・ロマン派は、感傷主義者のように廃墟に詠嘆せず、自分たちの存在と作品が、それ自体として廃墟であり、断片であると哲学的・美学的に捉えかえすのである。」(今泉文子「「廃墟」とロマン主義」)2020/03/12

0
20030325

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