内容説明
ひたすら改革が叫ばれ、アメリカ発の制度を取り入れた日本の大学。だが、その有効性はいまだ見えず、グローバル化の荒波の中を漂流している―著名な教育社会学者が新米教師の頃、いち早く警鐘を鳴らした「アメリカ大学教育体験記」から、日本の当時と変わらぬ問題点が浮かび上がる。
目次
第1章 ティーチング・アシスタント制度にみる日米大学比較考
第2章 新米教師のアメリカ学級日誌―もうひとつの日米教育比較考
第3章 シラバスと大学の授業、授業評価
第4章 高校から大学へ―高校間格差とトラッキングにみる入学者選抜の違い
第5章 アメリカの大学からみた日本の大学教育
第6章 漂流する日米の大学教育
著者等紹介
苅谷剛彦[カリヤタケヒコ]
オックスフォード大学社会学科および現代日本研究所教授、セント・アントニーズ・カレッジ・フェロー。1955年、東京都生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了、ノースウェスタン大学大学院博士課程修了、Ph.D.(社会学)。放送教育開発センター助教授、東京大学大学院教育学研究科教授を経て2008年から現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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isao_key
12
『知的複眼思考法』のロングセラーを持つ教育社会学が専門の著者によるアメリカと日本の大学におけるシステムの違いや問題点を考察した本。元は1992年に出版されているため、最新情報ではないものの、「今でも変わらない問題群を日本の大学<教育>が抱えていること、問題があることがわかっていても変えられない日本の大学と社会を取り巻く構造が根強くある」と指摘しているとおり、現在でも問題点は改善されていない。アメリカの大学についての問題は、堤美果さんの本でも指摘されていたが、大学のサービス業化が進み教育格差が広がっている。2016/02/16
tolucky1962
9
米国のTA・シラバス・授業評価を紹介。今は日本も広く導入されるが米国TAは学生が授業を任される等違いも。大学教員になるという。TAへの教育もシステム化される。米国では大量の文章の読み書きをさせ、図書館機能も充実。日本の片方向授業と異なる。日本は子供の能力は平等で差は努力の違いと考え能力別クラスでなく理解度ギャップを塾が埋め、経済格差が表れる。米国はどの科目を履修したかで大学入学資格を制限。違いの原因にコミュニケーションスタイルの違いを上げる。92年に書かれ追加して新書としてたので古いが、参考になる。 2017/07/05
Nobu A
7
二昔前に書かれた本の復刻改訂版。データの古さは否めないが、それでも示唆に富む。筆者の米国留学・教員体験を通しての比較論考。二国間の構造的な違いを明らかにし、高大接続やコミュニケーションの違いも言及しつつ、論証。大学ランキングに学生や保護者が引きずられ、「学生消費者主義」が内容軽量化を招き、米国大学も苦悩。流行の学習論、グループ学習や体験学習の頻度が批判的思考力等の育成に繋がらないデータは目から鱗。持ち込む制度を文脈化し、意義と役割を議論及び検証する必要性を痛感。他にも興味深い考察が多く、再読したい1冊。2018/04/17
ふたば@気合いは、心を込めて準備中
6
1992年に最初に発刊され、2012年に新書版として再発刊されたもの。日米の大学の制度、講義内容、教授陣、学生、入学や卒業、その後までを比較している。アメリカの大学の教育システムを評価し、その内容を取り入れてアメリカのような進んだ大学にしたいと望む日本が、まったくそのように進めていないことを嘆いているように読める。実際そう言いたいのだろうと思う。一方で、アメリカの制度はそのまま日本に持ち込んでも機能しないこともわかっているようだ。日本の大学が問題を抱えていないわけではない。ではアメリカの大学はどうなのか。2018/08/12
摩天楼
5
日本の大学がアメリカの大学制度を表面的に真似してもそう上手くはいかないことがよくわかった。土俵が違いすぎる。まさに現在の日本の大学に当てはまると思える問題が 多く書かれているが、これが 20年以上前に書かれたというのが皮肉である。2014/05/19