中公新書<br> 言論抑圧―矢内原事件の構図

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中公新書
言論抑圧―矢内原事件の構図

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  • サイズ 新書判/ページ数 238p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784121022844
  • NDC分類 316.1
  • Cコード C1221

内容説明

一九三七年、東京帝国大学教授の矢内原忠雄は、論文「国家の理想」が引き金となり、職を辞した。日中戦争勃発直後に起きたこの矢内原事件は、言論や思想が弾圧された時代の一コマとして名高い。本書は、出版界の状況や大学の内部抗争、政治の圧力といった複雑な構図をマイクロヒストリーの手法で読み解き、その実態を剔り出す。そこからは愛国心や学問の自由など、現代に通じる思想的な課題が浮かび上がる。

目次

序章 矢内原事件とマイクロヒストリー
第1章 言論人としての矢内原忠雄
第2章 出版界と言論抑圧
第3章 東京帝国大学経済学部をめぐる抗争
第4章 辞職の日
第5章 事件の波紋
終章 矢内原事件に見る思想的諸問題

著者等紹介

将基面貴巳[ショウギメンタカシ]
1967年生まれ。シェフィールド大学大学院歴史学博士課程修了(Ph.D.)。ケンブリッジ大学クレア・ホールのリサーチフェロー、オタゴ大学人文学部歴史学科専任講師などを経て、オタゴ大学人文学部歴史学科准教授、人文学部副学部長(研究担当)を兼任。専攻は政治思想史。著書に『ヨーロッパ政治思想の誕生』(名古屋大学出版会、2013年、第35回サントリー学芸賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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どんぐり

73
「矢内原帝大教授 辞表を提出す 事変下初の筆禍事件」—―と報じられた昭和初期の大学教授に対する言論抑圧。この事象について、歴史的出来事を精密に詳しく調査する「マイクロヒストリー」という手法で、背後にある人々の一般的な心性を明らかにする。東京帝国大学教授の矢内原忠雄の「日本は滅びよ」という一言が日中戦争を遂行するうえでの「障碍」であると問題視した木戸文相と文部省からの一撃に大学総長があえなく屈したという構図。いまの時代なら、大学人よ、屈することなかれである。2020/10/06

びす男

51
矢内原事件をもとに、「言論抑圧」のリアルな様相を描き出した一冊。「国家権力と対峙する学問の自由」という対立軸は、当時では必ずしも一般的でなかった。「象牙の塔」と形容される学府の存在意義とはなにか。筆者が取り上げる事例は、様々な問題点を提示してくるものだった。「消えていった人の声は聞くことができない。沈黙させられている人は、沈黙させられているという事実についても発言することができない」。忍び寄る抑圧の影を正しく認識できていたのは、ほんの一部の鋭敏な人だけだったのだろうなぁと思う。あとで書評かきます。2014/12/24

AICHAN

32
図書館本。戦前の言論弾圧事件として知られる「矢内原事件」を再検証する。それも細部から検証していくという手法による。浮かび上がってきたのは、政府当局による言論弾圧や教授間の権力闘争による事件ではなく、戦時期の言論の自主規制の一種、言い換えると周囲の「空気」によって起きた事件だという。昨今、「忖度」なる言葉がおおはやりだ。これもまた「空気」を読むという点でよく似ている。言論弾圧にしろ政治的強行にしろ、日本では「空気」が重要な役割を担っているのだなと思った。「空気」は見えないから気味悪い。2017/07/25

venturingbeyond

30
7月1冊目。昨年度末の引っ越しの際、ダンボールの奥底から、80頁ほどのところに栞を挟んだ状態で発見し、続きから読み進めて読了。佐籐卓己先生の『言論統制』を随分前に読んだこともあり、戦時体制下の言論統制について、さらに理解を深めようと購入したのだが、随分長い間積読してしまっていた...。本書は、矢内原事件の顛末をマイクロヒストリーの手法で、当事者の認識・意図を含め、事件の経過を詳細に描写し、後世の歴史的評価と渦中の人物の事態の認識のずれを明らかにしていく。2021/07/03

壱萬弐仟縁

27
マイクロヒストリー:無名の個人の資料を読み、社会で通用していた考え方を探る。文化一般のミクロコスモス として時代心性を明らかにする(11頁)。国家を統一国家たらしめる客観精神を矢内原は国家の理想とする (42頁)。国家総動員法や、現代の特定秘密保護法のように、実に窮屈で学者を排除、追い込むのが愚か なのかと思わされる。 2015/03/01

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