内容説明
『旧約聖書』に登場する、最初の人間アダムとイヴ。二人の名前は「禁断の木の実」「楽園追放」などのキーワードとともに語られ、日本人にとっても馴染み深い。しかし彼らの物語から生まれた、文化、思想、文学・美術作品の多様さは、私たちの想像を遙かに超えるものがある。本書では、美術史的な解説・解釈にとどまらず、アダムとイヴが歴史上いかに語られ、いかに現代社会に影響を及ぼしてきたかを探っていく。
目次
第1章 人間の創造
第2章 エデンの園
第3章 原罪と追放
第4章 エデンの東
著者等紹介
岡田温司[オカダアツシ]
1954年生まれ。京都大学大学院博士課程修了。京都大学大学院教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Nobuko Hashimoto
33
同じ著者の『西洋美術とレイシズム』がとても面白かったので。旧約聖書『創世記』で最初の人類とされているアダムとイヴ、彼らの息子のカインとアベル(とセツ)が神学者や文学者にどう解釈され、どう絵画や彫刻に表されてきたかをたどる。図版たっぷりで非常に面白くてわかりやすい。聖書のなかの理解しがたい逸話や、キリスト教解釈に潜む女性蔑視に対する著者の見解も明快で共感できる。こうして解説してもらうと、歴史、宗教、文化の変遷の意味や意義が腑に落ちていく感じ。ほかにも3作あるようなのでそれらも読もうっと!2021/03/15
かりあ
14
めちゃくちゃ面白かった。忙しい日々の中、空いた時間のほとんどをこの本につぎ込みじっくり行きつ戻りつしながら読んだ。アダムとイヴという神話が、いかに今の私たちの社会と関係があるか…。日本がいま西洋思想、主義のなかで生活している以上、キリスト教とは全くの無縁ではないことをつくづく思い知る。キリスト教についてもっと勉強せねばと思う。2015/07/22
D.Okada
12
アダムとイヴ。彼らをめぐる物語が普遍的性格を有するのは「人間とは何か」の本質的テーマがそこに凝縮されているからである。ただ単に美術史の本というわけでなく、現代社会の問題(創造をめぐってはフェミニズム、原罪をめぐっては遺伝学や科学技術の発展)にも言及されており、アダムとイヴをめぐる問いは古くて新しい問いと言える。そもそも創造の段階からその解釈をめぐってプラトン的な両性具有説、フィロンの二重創造説、それらに反論を加えるアウグスティヌスなど論争的なモチーフばかりである。「人間の物語」の始まりの良い入門書。2013/01/10
utataneneko
7
世界中で知らない人はいないであろう、アダムとイヴの物語。この物語が、それぞれの時代やさまざまな立場により、どのような見方をされてきたのか、古今の書物や美術作品などをひもときながら一つ一つ解き明かしていく。一言にアダムとイヴの物語といっても、彼らがどのように生まれどのような意味付けをされてきたのか、楽園とはどこか、そしてその子孫—カインやアベルの物語に至るまで、取り上げられているテーマは多岐にわたり、じつに深い。哲学や神学など難しい話も扱っているが、新書ならではの親しみやすい語り口で、読みやすかった。2014/10/18
まーや
7
アダムとイヴ、語り継がれるからこそ色んな視点があってそれぞれの意見を読むことができて勉強になったなぁ。文章だけでなく、地図や絵画も多くあってそこもまた面白かったし興味深いですね。2013/01/15