内容説明
日本最長の八年に及ぶ首相在任期間を誇る桂太郎。三度の政権下、日露戦争、韓国併合と、外には帝国主義政策を断行、内には伊藤博文らの次世代として、最後には政党結政に動く。山県有朋の“傀儡”と、低く評価されてきた桂だが、軍人出身ながら、軍の予算を抑制、国家全体の利益を最優先し、緊縮財政を追求し続ける。時代の制約の中、「ニコポン」と呼ばれた調整型政治家が求めたものは何か―。その全貌を描く。
目次
第1章 戊辰戦争、留学を経て陸軍官僚へ
第2章 政治家への道程―従軍、植民地統治、陸相
第3章 日露戦争に向けて―第一次桂内閣の外交と内政
第4章 日露戦争と桂園体制の成立―「準元老」への飛躍
第5章 第二次桂内閣と「桂園体制」の特質
第6章 大正政変前夜―「遅れてきた元老」として
第7章 桂新党―「立憲統一党」から「立憲同志会」へ
第8章 桂のいちばん長い日―一九一三年二月一〇日
著者等紹介
千葉功[チバイサオ]
1969(昭和44)年千葉県生まれ。93年東京大学文学部国史学科卒業。2000年東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。昭和女子大学人間文化学部歴史文化学科准教授などを経て、2011年より学習院大学文学部史学科教授。専攻・日本近現代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mitei
51
総理大臣が年ごとに変わるようになったなか史上最長の内閣総理大臣在任歴を誇る桂太郎に焦点を当てた一冊。結構戦前の重要な時に要職についていた人なのに何故教科書でもあまり取り上げられないのか不思議だ。2012/07/18
Tadashi_N
36
現代日本に大局を見る政治家がいないことを感じた。日本人に政党政治は難しいのか?2018/01/07
Tomoichi
27
安倍元総理に抜かれるまで総理大臣在任日数1位だった桂太郎。日露戦争時や韓国併合時の総理大臣で元老でもあったのに今となっては影が薄い桂。しかし元勲の時代と政党政治の時代をつなぐ桂園時代を担った彼を無視して明治・大正は語れない。そういう意味で貴重な一冊だが、巻頭で日露戦争を帝国主義戦争と定義しているので、そういう著者ということは理解して読む必要はあります。2023/12/02
たー
19
比較的地味な?印象の政治家の伝記だけど面白かった。維新世代を引き継いで良くも悪くも戦前の日本の基礎がためをした人だったんですね。2012/11/12
skunk_c
18
日露戦争時の宰相であり、また大正政変の劇的な総辞職で知られる政治家の評伝。長州閥第2世代で、日清戦争では中堅将校、そして山県有朋の庇護の元に政治家として成長した桂は、桂園時代に代表されるように、立憲政友会に対抗して藩閥政治を貫いたようなイメージがある。しかし著者によれば、桂の見所はその財政政策にあったという。自ら大蔵大臣を兼務して緊縮財政に臨む姿勢は、桂亡き後は浜口雄幸まで待たれるとか。一方政党政治をある意味容認し、立憲同志会設立まで行くが、その組織原理を軍隊と同一視したことが誤算とも言う。面白い見方だ。2016/10/22