内容説明
日本史の研究では、平安時代より奈良時代のほうがよくわかると言う。正倉院文書があるからである。美しく飾られた天皇や皇后の肉筆、戸籍などの公文書もあれば、下級役人の昇進嘆願書や盗まれた物を捜すための休暇願、待遇改善を訴えるメモも残されている。華やかな東大寺大仏開眼の模様、クーデターの内実、さらには庶民の衣食住まで、バラエティ豊かな文書から天平の息吹きを感じてみよう。あわせて流出した文書の謎も解明。
目次
序章 正倉院文書の世界
第1章 聖武天皇と光明皇后
第2章 大仏開眼
第3章 国家と百姓
第4章 中央官制と地方行政
第5章 造寺・造仏と写経―国家プロジェクト
第6章 国家プロジェクトを支えた人々
第7章 天平の国際交流
終章 正倉院文書研究をめぐる環境
著者等紹介
丸山裕美子[マルヤマユミコ]
1961年(昭和36年)、広島県生まれ。1984年、お茶の水女子大学文教育学部卒業、93年、お茶の水女子大学大学院博士課程単位取得退学。99年、博士(文学)(東京大学)。愛知県立大学助教授などを経て、同大学教授。専攻・日本古代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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takeapple
17
古文書からこんなにも生き生きとした歴史がわかるのかと今更ながら感激する。しかも正倉院文書だから奈良時代、1400年も前のことである。写経生の日々の生活、鑑真のこと、恵美押勝や彼に与して私腹を肥やした人物。青木和夫『奈良の都』も読みたくなった。2018/03/17
おらひらお
3
2010年初版。なかなか接点がない正倉院文書ですが、わかりやすくまとめられた一冊になっています。最後の正倉院から散逸した文書の経緯の話が興味深かったです。江戸時代の古物集集ブームの影響がここにも出ています…。2012/10/25
ゆずこまめ
2
奈良時代の庶民の暮らしから天皇や皇后の筆跡まで、色々なことがわかって楽しい。2020/12/08
Mentyu
2
史料を徹底的に読み込んだ上で、記述の批判を行うという文献史学のエッセンスを凝縮した一冊となっている。基本的に裏紙(再利用)で、しかも断簡やつぎはぎだらけの正倉院文書を扱うというのは気の遠くなるような話である。ましてそのような史料を前にして、行間から見えてくる人や経済の動きを緻密に復元していくというのは並大抵のことではなく、職人技の域にまで達している。本書を読み進めながら、地(史料)に足の付いた歴史学のあり方を突きつけられたような気分になった。2018/01/06
びっぐすとん
1
図書館本。ちょっと前までマイブームだったシルクロードの終点、正倉院。そこに伝わる文書の紙が書類の再利用だったので、二つの事実を伝えてくれたのか。奈良の戸籍制度をみると結構70・80歳代もいたんだなぁ。高齢出産も。同じく奈良の写経生の食事をみると超粗食なのに・・。塩や酢など調味料がそのままオカズででてくるなんて。失敗の償いで宴会を開いたり、鍋パーティーや持ち寄りパーティーもあって、すごく遠い時代なのに親近感を覚えた。厳重に管理している正倉院でも千年以上経つと、目録にあるお宝がなくなってしまうのか。残念。2016/09/14