中公新書<br> 「戦争体験」の戦後史―世代・教養・イデオロギー

電子版価格
¥924
  • 電書あり

中公新書
「戦争体験」の戦後史―世代・教養・イデオロギー

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 新書判/ページ数 286p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784121019905
  • NDC分類 210.75
  • Cコード C1221

出版社内容情報

悲劇として語られることが多い「戦争体験」。だが時代や政治は、様々に歪め、利用してきた。戦後社会で論争となった戦争観の変遷

内容説明

アジア・太平洋戦争下、三〇〇万人以上犠牲者を出した日本。この「戦争体験」は、悲劇として語られ、現在では反戦・平和と結びつくことが多い。だが、戦後六〇年のなかでそれは、実は様々な形で語られてきていた。本書は、学徒兵たちへの評価を中心に、「戦争体験」が、世代・教養・イデオロギーの違いによって、どのように記憶され、語られ、利用されてきたかを辿り、あの戦争に対する日本人の複雑な思いの変遷をみる。

目次

第1章 死者への共感と反感―一九四五~五八年(遺稿集のベストセラー;戦没学徒の国民化―教養への憧憬;戦没学徒への反感;反戦運動の隆盛;反戦とファシズムの類似性―学生運動批判)
第2章 政治の喧噪、語りがたい記憶―一九五九~六八年(六〇年安保と「戦争体験」の距離;農民兵士たちの心情;「戦争体験」への拒否感―戦中派の孤立)
第3章 断絶と継承―一九六九年~(大学紛争の激化―「わだつみ像」の破壊;天皇をめぐる「忠誠」と「反逆」;戦争責任論と教養の現代)

著者等紹介

福間良明[フクマヨシアキ]
1969(昭和44)年熊本県生まれ。92年同志社大学文学部卒業、出版社勤務ののち、2003年京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。博士(人間・環境学)。香川大学経済学部准教授を経て、2008年より立命館大学産業社会学部准教授。専攻は歴史社会学・メディア史。著書『「反戦」のメディア史―戦後日本における世論と輿論の拮抗』(世界思想社、2006年、内川芳美記念マス・コミュニケーション学会賞受賞)、論文「ラフカディオ・ハーン研究言説における『西洋』『日本』『辺境』の表象とナショナリティ」(『社会学評論』210号、2002年、日本社会学会奨励賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ネムル

20
『きけわだつみのこえ』を中心に、戦争体験がどう継承(断絶)されてきたか、社会学的に考察している。ここで描かれる世代・教養・イデオロギー間の多くの断絶を見るに、現在に向けてどれだけ戦争のイメージが歪曲・美化されてきたかよくわかる(80年代生まれと、戦争にはるか遅れてきた身だけに)。また、戦中の教養を得られなかった世代と前後の教養主義世代、農民兵と学徒兵間の断絶や、戦争責任をめぐる学徒兵の教養の有無など、教養が如何にマウンティングの道具に使われたか、鋭い指摘が繰り返されていて、恐々として読んだ。好著。2018/04/06

ちあき

13
戦争体験がどう語られてきたか、日本戦没学生記念会(わだつみ会)とその周辺の動向を中心に検証した新書。対象は思想・言論の水準に達している言葉にほぼ限定されており、「満足な教育も受けず長年沈黙しつづけた老人がふともらす述懐」のようなものは俎上にのせられない。ある世代の共有体験が教養主義と結びつき、後続の世代にとって抑圧として機能する構図も非常に息苦しい。しかし、体験の断絶に可能性を見いだすユニークな視角の戦後思想史として労作であることはまちがいない。『近現代日本史と歴史学』『教養主義の没落』との併読を推奨。2013/07/17

ハチアカデミー

12
B 「きけわだつみのこえ」の受容史からみる戦後日本の「戦争観」の変遷。それは世代間の認識の違いによる争いでもあった。戦争と教養主義の結びつきの指摘が読み所。学徒兵に対する認識が、現在はいかに美化され、単純化されているのかがわかる。ポケットに岩波文庫を忍ばせ、死の間際まで抱いた学問・教養に対する思いに、生き残った同世代は強く共感した。マルクスを読んでいても、ニーチェを読んでいても、それでもなお戦わざるを得なかった苦悩に共感するのである。ただの悲しい物語としてしか認識できていない現代の空虚さを思い知る。2013/03/07

モリータ

11
空襲・原爆等を含む戦争体験全体についての論ではなく、教養や平和運動の変転の中で、戦没学生を記念する「わだつみ会」と『きけわだつみのこえ』をめぐる「戦争体験の語り」の歴史的展開をみるもの。客観的叙述の面が強いので読んでいて不安になる部分もあったが(「農民出身の兵にとって軍隊は一種平等な世界だった」など、筆者もそう思っているのではないのだろうが…といった不安)その分流れは摑みやすかった。気になったのは、「ベストセラー」をもって真に庶民的教養として国民に広まったと言えるのかということ(読者人口の少なさ)。2016/08/08

kuukazoo

10
「きけわだつみのこえ」が1949年に出版されて以来、戦後知識人の間で戦争体験の受容や継承をめぐりこんなに複雑な議論がなされてきたとは知らなかった。戦後思想史についても知らなかったので勉強になった。戦争体験を語り継ぐことは往々にして反戦と平和と結びつけられるが、世代や立場によっては批判の対象にもなり、イデオロギーの正当化のために戦争体験が安易に流用されることへの抵抗もあった。現代ではそういう複雑な部分が抜け落ちて戦争観が二項対立化してしまい、声のでかい主張ばかりが受け入れられやすいことに危機を感じる。2015/12/13

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/451915
  • ご注意事項