出版社内容情報
絢爛豪華な屏風絵と幽玄枯淡な水墨が共存・繁栄した一六世紀は美術における大転換期だった。日本画の面白さを、豊富な図版で解説。
内容説明
秀吉の活躍した一六世紀、日本絵画は多彩なあり方を見せた。何を対象にして、どう描くかという表現の問題だけではなく、絵画を鑑賞する場、制作者の側など、さまざまな点で変化があった。本書では、そのような新しい傾向を「絵画の変」と捉えて、その実態を具体的に浮かび上がらせていく。従来は絵画という範疇になかったものをも含む多様で豊饒な世界を通して、この時期の、そして、日本の美術の面白さを堪能する。
目次
第1章 転換期としての一六世紀
第2章 絵画鑑賞の場の成立
第3章 新しい画家像としての狩野派
第4章 絵画制作の新たな場―町物と奈良絵
第5章 中国主題の受容とその和様化
第6章 風俗画の成立
第7章 一六世紀における和歌と絵画
著者等紹介
並木誠士[ナミキセイシ]
1955年、東京生まれ。1980年、京都大学文学部卒業。財団法人徳川黎明会徳川美術館学芸員、京都造形芸術大学助教授等を経て、京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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umeko
11
時代の流れの中で、絵画の持つ役割が変化してゆく様が面白い。もちろん描かれる対象の変化もある。作品自体の構図や描写の素晴らしさも鑑賞者が楽しむ要素ではあるが、時代の中の作品の立ち位置を背景に鑑賞すると更に奥行が出るのではと、次回美術館に行くことが楽しみになった。2020/07/03
アメヲトコ
6
政治史的な時代区分ではなく、16世紀という世紀の枠組みで転換期の日本美術を叙述したもの。後半部、風俗画と「モノ」への着目という点の指摘が興味深かったです。2019/08/24
もち
3
美術館や博物館で、みたことはあるが、綺麗だとしか認識していなかったものについて、16世紀という激動の時代での文化の開花のような形で知ることができた。おもしろかった。コロナ後、美術館に足を運ぶ前にまた読み返したい。2020/05/03
A.T
3
同時に読んでいた「岩佐又兵衛 浮世絵をつくった男の謎」との時代背景の連続性で、ますます楽しめた。2013/01/04
yui
1
室町時代から江戸時代、ではなく15〜16世紀というくくりで日本美術を考える。狩野派の江戸初期ころまでの流れおよび特徴、屏風に描かれた題材の考察や、日本美術における風俗画誕生への流れを従来の月次絵や名所絵から考えるのではなく参詣曼荼羅や酒飯論絵巻などから考察して興味深い。「モノ」の絵画化という短な物事を絵画に描きこみそれが次第に主題化していくという論がとても面白かった。2014/07/17