内容説明
日本の自動車産業は、製品の品質、世界市場でのシェアなど現在も世界トップレベルにある。またカンバン方式、TQCなど日本発の生産システムが「グローバルスタンダード」となっている。これほど国際競争力があるのはなぜなのか。その強さの秘密に、企業が生産・開発現場で総合的な実力を競いあう「能力構築競争」という観点から迫り、長期不況下にあって自信喪失に陥っている日本企業の再生に向け、明確な指針を提示する。
目次
序章 もの造り現場からの産業論
第1章 自動車産業における競争の本質
第2章 能力構築競争とは何か
第3章 なぜ自動車では強かったのか
第4章 もの造り組織能力の解剖学
第5章 能力構築の軌跡―二十世紀後半の自動車産業
第6章 創発的な能力構築の論理
第7章 紛争―脇役としての貿易摩擦
第8章 協調―競争を補完する提携ネットワーク
第9章 欧米の追い上げと日本の軌道修正
第10章 能力構築競争は続く
著者等紹介
藤本隆宏[フジモトタカヒロ]
1955年(昭和30年)、東京都に生まれる。東京大学経済学部卒業。三菱総合研究所を経て、ハーバード大学ビジネススクール博士課程修了(Ph.D.)。現在、東京大学大学院経済学研究科教授、ハーバード大学ビジネススクール上級研究員、経済産業研究所ファカルティフェロー。専攻、技術管理論・生産管理論・経営管理論
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感想・レビュー
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KAZOO
85
新書にしては内容も専門的でかなり厚い本で半年間の授業の教科書のような感じです。新書として読むにはかなり専門的な内容で理解するにも少し時間がかかります。日本における自動車産業の立ち位置をそのさまざまな工夫を行っていることなどから分析しています。ドイツのフォルクスワーゲンが今の状況になっているにつけ、やはり日本の自動車産業の強さが光ります。2015/10/30
佐島楓
29
日本の「ものづくり」の秘密とはなにか、多角的に検証したもの。この本では自動車産業に絞って分析を行っているが、見えない部分での努力やシステムにもかなり突っ込んでいて勉強になった。400ページ近いずっしりとした新書。2014/11/24
Saiid al-Halawi
8
過去半世紀くらいの自動車業界「ものづくり力」発展の経過を追う産業史。ここでいう能力は組織能力のコトで、可視化しづらい生産性向上に向けた経験的集積が組織としてのブラッシュアップを促した。これに加えて、価格競争などとは違いあくまでも水面下で起こる競争のため、結果的に国外企業がスグにはキャッチアップはできず90年代以降もある程度日本企業の優位が保持された。2014/02/16
ぴこ
4
読んで大正解。日頃メーカーと仕事していると彼らがどういう視点に立っているかを把握してあげるのが重要だと思っていたので勉強になる。端的に言うと日本の自動車産業が国際的競争力が強い理由は、能力構築競争を行なっているから、というのが著者の根本意見である。著者は10年かけてこの新書を書いたらしい。単なる事実の集積によるドグマではなく、潜在的・顕在的ファクターと統計を織り交ぜた社会学のお手本のような研究なので、日米貿易摩擦は本質的には自動車産業に影響を与えなかったと言われても納得せざるをえない。2016/02/18
ksk1975
3
藤本氏の講演を聞いたのがきっかけでずいぶん前に読んだ。氏の著書は、どれを読んでも、モジュラー型とインテグラル型の対比に終始していて、どれか一冊読めば十分な印象(ごめんなさい)。この本は親書で割と手軽に読めるところがいいかなぁ。どれか一冊読むなら個人的にはこれ。 とはいえ本書からはPCみたいな標準部品の組み合わせと自動車みたいな独自規格部品の集大成の産業構造の違いに関して、いろいろ気づきが得られる。『そうかユーロ圏の連中は自動車を含めあらゆる産業をモジュラー型にしようとしてるのね』みたいな視点を得るきっかけ