中公新書<br> 長州奇兵隊―勝者のなかの敗者たち

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中公新書
長州奇兵隊―勝者のなかの敗者たち

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  • サイズ 新書判/ページ数 255p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784121016669
  • NDC分類 210.58
  • Cコード C1221

内容説明

戊辰戦争に勝利し、明治国家の中核となった長州藩。しかし、その栄光の歴史の陰には、好むと好まざるとにかかわらず戦い、斃れていった多くの無名の犠牲者が存在する。高杉晋作が創設し、勝利の原動力となった奇兵隊も、維新後は解隊命令が下され、内戦で多くの命が失われていった。著者は遺された史料や伝承をたんねんにたどり、懸命に生きた人びとの姿に光をあてる。違人伝や英雄譚ではない、本物の歴史がここにある。

目次

第1章 「本物の歴史」を求めて
第2章 松陰を神格化した人たち
第3章 堕落する「志士」
第4章 墓碑は語る
第5章 町かどの維新史
第6章 「志士」たちの「内ゲバ」
第7章 「俗論派」の維新
第8章 異郷の土になる
第9章 悲劇の長州奇兵隊
第10章 窮乏する士族たち

著者等紹介

一坂太郎[イチサカタロウ]
昭和41年(1966)、兵庫県生まれ。大正大学文学部史学科卒。現在、東行記念館副館長・学芸員を務め、また春風文庫を主宰し、幕末維新史料の収集・研究にあたる。講演・テレビ出演も多い
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

skunk_c

69
タイトルは「奇兵隊」だが、ここで取り上げられるのはもっと幅広い民衆サイドや敗者の視点からみた幕末長州史だ。著者は萩の東行記念館学芸員で、墓碑を丹念に巡り、そこに記された内容などから、これまで語られてこなかった、例えば「俗物派」と呼ばれる穏健現実主義者たちや、幕末維新期に起こった「内ゲバ」など、明治以降権力に着いた公式の「長州史」では避けられてきた史実に光を当てる。襖の裏張りに使われた手紙が史料となるなど興味深い逸話もあり、とても面白かった。大学教授の書とはひと味違う地域に根ざした歴史研究として秀逸と思う。2022/11/23

印度 洋一郎

10
明治維新の勝ち組「長州」における陰の部分に着目。藩内での「俗論派」と「正義派」との抗争の余波、松陰門下生の毀誉褒貶など、流布する長州藩のイメージとは異なる逸話の数々は、より重層的に歴史を理解出来るが、同時に歴史のロマンを木端微塵にするものなので、読む人を選ぶ内容だ。書名にフィーチャーされている奇兵隊は、長州の普通の人々から見たら無頼の輩の集団だったとか、維新後に冷遇されて大規模な反乱を起こしたとか、草莽の志士というイメージを覆してくれる。明治の元勲、伊藤博文と山縣有朋に対する屈折した地元の評価も興味深い。2013/10/08

つぶあん派

7
明治維新という変革の犠牲者。本文中のこの言葉が、全てを表している。奇兵隊のその後の話などは、全く知らなかったので衝撃をうけた。また、誤解から殺された者、長州の者だからと殺された者、政治のために自害しろと強要された者…多くの人々の犠牲があったことを、この本で初めて意識した。偉人の影で、偉人を支えた者達が打ち捨てられた。また、福島と山口の繋がりというか、因縁を知り驚愕。その中でも真心を忘れない、助け合いの精神を持つ人々の存在にほっとしたりもした。2013/04/04

keisuke

6
敗者の歴史が書かれていた。奇兵隊の全てが勝者ではなく、その中のほんの一握りが勝者になった。そして、その勝者が敗者の歴史を消してきた。表に出ている歴史を鵜呑みにしないということが大事だなと思った。2015/03/29

Toska

5
革命後に勝者の陣営で激しい路線闘争や権力争いが起き、ここで敗れた人々が革命の敗者にも劣らぬほどの弾圧を受けるのは洋の東西を問わず、明治維新も例外ではなかった。そうした「知られざる敗者」の軌跡を、共感を込め、しかもプロの研究者としての矩を超えずに追いかけていくというのは重要な仕事だと思う。陰影に満ちた維新史や長州藩への興味を、凡百の英雄物語以上にかき立ててくれる一冊。2022/01/07

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