内容説明
民間の職業紹介事業の原則禁止、派遣社員の働き方の制約など日本の労働市場には様々な規制がある。しかし時間労働と賃金支払いが一体の時代に有効であったこれらの規制は、裁量労働制の拡大、パートタイマーや派遣社員の増加、それに伴う正規社員との摩擦など、激変する情勢に対応しきれなくなっている。規制緩和は、今や企業側の都合だけでなく、多様な働き方を求める労働側からの要請でもある。雇用流動化時代の労働行政を問う。
目次
第1章 雇用流動化への対応
第2章 雇用政策の基本的方向
第3章 働き方の規制改革
第4章 雇用契約の自由はなぜ認められないか
第5章 賃金・労働時間への規制はどこまで必要か
第6章 男女雇用機会の平等化の意味
第7章 非正規社員―保護されざる労働者
第8章 職業紹介の自由化と労働市場の安全弁
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Miyoshi Hirotaka
35
「労働は商品ではない」という亡霊がわが国の労働市場をさまよっている。労働市場の規制は労働者の尊厳を守るために当然という保護の思想が労働者のニーズや多様化に対応していない。逆に、経済社会環境が大きく変化している中で、画一的な働き方を強制している。労働市場の自由化は、経営側の得になるというのが従来の通念だったが、労働組合も画一的な規則や団結では多様性の大きな労働者を守ることができなくなっている。透明性の高いルールの下で独占的行為を防ぐ最低限の規制を作り、その遵守を強制することで健全な競争を生んだ方がよい。2016/11/10