内容説明
暮らしの核心は「何か特別なこと」にではなく、「特に何もしていない時」にある。ハレを追求するよりケの充実が重要なのだ。人生はありふれた行為の集積であり、住まいはその容器である。形や間取りをいくらよくしても、住意識が伴わなければ住み心地のいい住まいは実現できない。「ただ居るのが楽しい家」こそ理想の家だ。私性を重視し、日常の充実に価値をおく建築家が自らの仕事と暮らしの周辺を語る、ハウツーを超えた住宅原論。
目次
1 暮らしをめぐって
2 仕事場をめぐって
3 私の家
4 住むということ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ja^2
6
私性を守るのが住宅だという。私性とは、「私の」という形容で語られるものの集まりで、「私の」という所有格の幻想が許される他人が家族なのだと。▼なぜ幻想かといえば、所詮は一番近いとはいえ、他人だからだ。「家制度」がなくなり虚構性・脆弱性が指摘されているとはいえ、だからこそ家族こそが私性の根拠であるとして、守る必要があるのだと主張する。▼だが私のように、その家族が離散しつつある場合、住宅は何を守れば良いのだろう。必然的に物質的なものに限定されるが、それだけではあまりに寂しい。人はそれを孤独というのだろう。2016/04/14
かもすぱ
2
「住まい方」シリーズの3番目、「実践」。1作目の「思想」を以前読んでいたところに古書店で偶然見つけたので購入。肩肘張らずに語りかけてくれるから、建築と暮らし方(特に住まいの「居易さ」)についての考え方がするっと馴染む。著者自身の家について語る章では、紺屋の白袴的な箇所も面白かった。2作目「演出」も手に入れたのであとで読みます。2017/05/28
ハパナ
2
序盤雑誌のコラム集から入り、後半で本題に入ります。「過程の時間」と「それ自身の時間」とは手段と目的であり、著者はその多少の不便を押しても目的となる要素を増やすとあります。”私性の拠点としての家族とその虚構性”というフレーズの答えが、”家族は一番近い他人”としながらも”観念して~虚構だからこそ守る”という考え方に、えも言われぬ健全性を感じました。住まい方の思想”があってその続編としての”住まい方の実践”だったので、その思想に沿った実例集の様な内容かと思いましたが違いました。面白いけど少し違うよねと思いつつ2016/02/02
ja^2
1
建築の神髄はソリッドにあるのではなくボイドにある2011/09/13
くらぴい
0
著者の建築家としての考えを、仕事とプライベートの暮らしの面から書かれたものと思います。2007/07/11