内容説明
長野県山形村に、同地で農業を営む一老人の六十年以上に及ぶ日記が残されている。彼は、戦争、農地改革、農産物自由化などの波に揉まれ、その間、主な産物も、繭、酪農品、野菜とシフトさせてきた。さらに、自身の病気、家族内や村内に起こる問題が、彼の人生を変えていった。本書は、農業問題に三十年以上携わってきた放送ジャーナリストが、今や崩壊の危機に直面している日本農業の原点を、一農家の日記から見直す試みである。
目次
序章 日記との出会い
第1章 戦争と病気と
第2章 敗戦・混乱の家と村
第3章 人生は蚕に始まる
第4章 改革を解せぬ地主は困る
第5章 長芋とねぎとの格闘
第6章 農村社会と家・家族
第7章 村の政治の渦中で
第8章 水・しきたり・道祖神
第9章 激動の農政と正三
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
OjohmbonX
2
長野のある農家の人(唐沢正三)が1930年、15歳から60年以上書き続けた日記をひもとくという貴重な本。『元禄御畳奉行の日記』とかもだけど、偉人とかじゃない普通の日常生活とその時々の気持ちが記録された日記は、当時のシステムや内在的なロジックを組み立てるのに本当にありがたい資料になってくるけど、どうしても後の時代に残りづらい。家族に関する感覚や、戦時中の状況、国の農業政策との関係、農村での政治のあり方、贈答の仕組み等々、内側からどう見えてどう対処しているのかが本当に面白い。あと養蚕のプロセスが本当に激務だ。2017/07/28
おらひらお
1
1996年初版。タイトルから地味なイメージを抱かされますが、なかなか面白い。昭和5年以降欠かさず記されたある農家の日記を通じて戦前から戦後期にかけての農村の姿をあぶりだしています。著者がもう少し歴史に詳しければ、もっと面白いものになったと思います。2012/02/09
寝なきゃ
0
ごく一般的な農民の日記。農業、農村、農民にに妙な思い込みを持っている人は読むべき本。農業もお仕事なのだ。2015/06/16
はと
0
「敗戦に気を腐らせても仕方がないので芋掘りに行く」。この頃の農民は強い。2015/05/17
wei xian tiang
0
農民日記は面白い。西日本文化連載の安高団兵衛、片江儀六日記も毎号楽しみにしていた口である。本書は素材である長野県山形村の唐沢正三日記の内容は大変面白いのだが、テレビ局出身の編者がいけない。農業ジャーナリストを自称しているが、製糸と紡績を混同したり、所々の編者のコメント、全てを中央政界に結びつけ、日記に政治的記述がないことを殊更に強調するのも首を傾げざるを得ない。結局農業ジャーナリストというより農政、もしくは農政族ジャーナリストというところなのだろう。戦前の勤労奉仕による村道補修と、旧ソ連で編者が取材したと2013/11/07