内容説明
干戈轟く群雄割拠の時代、朝廷最高の官職の家柄に生まれた近衛前久は、抗争渦巻く武家社会に身を投じて、上杉謙信とは盟約を結んで関東に下り、織田信長とはその意を受けて石山本願寺との講和に貢献し、豊臣秀吉とはその関白就任にあたって自分の猶子とし、家康とは叙任、徳川改称について朝廷に斡旋するなど、公家でありながら、武家に伍して天下統一の大事業に挑んだ人物であった。公家社会最高権門の行動に時代の大転換をみる。
目次
序章 天下一統世代の誕生
第1章 戦国時代(上杉謙信との盟約;関東の関白;足利義昭との確執)
第2章 織田時代(織田信長との親交;信長の覇業と前久;転機となった天正十年)
第3章 豊臣時代(徳川家康を頼る;羽柴秀吉の関白就任;子息信尹の薩摩配流)
終章 天下一統の完成
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Toska
11
現職関白なのに上杉謙信とつるんで関東まで出かけたり、織田信長のエージェントとして西国政策を手伝ったりと、色々が面白い人。一冊捧げられる価値は間違いなくあるのだが、織田信長や戦国期の公武関係、三好政権などに関する研究が急速に進む前の段階の著作であるだけに、どうしても古さを感じてしまうのはやむを得ないところ。裏を返せば、過去20年間の戦国史研究がそれだけの進化を遂げているということか。2023/02/28
MUNEKAZ
10
大河ドラマに合わせて、25年ぶりに再版された一冊(肝心の大河は前久が出る前に休止になっちゃいましたが…)。副題がすべてを表していて、上杉謙信に朝廷再興をかけた青春から信長との肝胆相照らす蜜月時代、そして秀吉に利用され苦悶し、諦念の境地すら感じさせる晩年と、公家のトップでありながら浮き沈みの激しい一生はなかなかのもの。実力がモノを言う時代に、自身の生まれと教養で道を切り開こうとした苦闘がよくわかる。また鎌倉時代から続く島津家との縁も印象的で、幕末京都の政局で薩摩藩が活躍できた理由の一端が垣間見える。2020/06/10
とし
9
五摂家筆頭、近衛家の長者として、信長・秀吉・家康の時代を生きた近衛前久の生涯。面白かった。2018/05/29
はら坊
6
近衛前久についての本邦唯一の評伝。 「麒麟がくる」に前久が主要キャストとして登場することもあり、出版から25年半を経て異例の重版がかかった書である。私も再販本を購入した。 現職の関白ながら上杉謙信と意気投合して東国に下ったり、和睦の使者として九州に出向いたにもかかわらず出陣しようとしたりと、名門公家とは思えぬ前久の人となりがよくまとめられている。 さすがに古さを感じる叙述はあるが、織田政権下の行列における、前関白近衛前久>大納言近衛信尹≧関白九条兼孝という序列への指摘など、現在でも論点になり得る記述多し。2020/04/24
クサバナリスト
6
近衛前久、大河ドラマなんかでもちょこっとしか登場しないが、波瀾にとんだ人生かな? 戦国時代こうして公家から見てみるとまた違ったものが見えてくる。2020/04/14