内容説明
野ブタ、火喰い鳥、魚介類の狩猟と採集。サゴヤシの利用。イモ類の栽培。多様な環境に適応した食体系をもつパプアニューギニアに、近代化の波と共に加工食品が流入してくる。新奇な食物と栄養摂取で、“余裕なき平衡”を保っていた人々の生活、体格、疾病はどう変化したか。20年にわたる野外調査、精密な代謝分析をもとに伝統的食品の効用と“塩なし文化”の変容を検証し、パプアニューギニアを鏡に現代日本の生活と健康を映し出す。
目次
1 ダルーの路上マーケット
2 サゴヤシはどこにある
3 弓矢とショットガン
4 自然の食物の成分
5 からだと環境汚染
6 余裕なき平衡
7 「塩なし文化」の変容
8 雨林を歩く
9 タロからサツマイモへ
10 鉄とマラリアと
終章 パプアに何を学ぶか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ワッピー
35
「鳥になった少年」から派生。インドネシアとの国境に近い高地に居住するギデラ族を中心に栄養面からの1971~89年の継続的な生態学研究レポート。伝統的な食事による栄養像、そして塩分を多く含む加工食品(缶詰)の影響だけではなく、環境汚染の予兆、寄生虫病の蔓延といった環境全体への視野が得られる栄養学には驚嘆。全体に理系ベースの記述ではあるが、たまに出てくる現地の環境や生活習慣の情報は面白い。特定の木の灰からナトリウムが摂取されること、植物由来の食物が中心で、動物由来の食物はそこまで多くないことも意外でした。2022/04/28
takao
2
ふむ2022/07/05
韓信
2
パプアニューギニアのギデラ族の生活に密着し、近代化による食生活の変容と健康への影響等を調査したレポート。コンビーフなど西欧型の食事が入ってきたことでタンパク源に乏しい環境に適応していた形質が損なわれるおそれがある等、「塩なし文化」と西欧型食生活のそれぞれの長所短所を相対視する。著者の医薬品を「マジック」と呼び、自分たちのものより強い呪術と認識する呪術的世界観は読んでいて新鮮だった。粉っぽいサゴヤシ、草の匂いがするワラビー、肉の硬い火喰い鳥、塩の代わりに植物灰でナトリウム摂取など、食事の話も面白い。2020/08/11
フヒねむ
1
少し古い本なので現在のパプアニューギニアが気になりました。資料も豊富で記録としての価値は高そうです。 感想文書きました。http://fuhinemu.hatenablog.com/entry/2016/09/24/2000002016/09/30
みい⇔みさまる@この世の悪であれ
1
○…塩なし文化の国、パプアニューギニアで著者が調査した記録。マラリアの項が結構参考になりました。2009/07/23