内容説明
わびしく簡素なたたずまい、領地を与えるしらせに一喜一憂するまずしい絵師とその家族―絵巻『絵師草紙』は絵師が領地をめぐる窮状を、絵と詞に託して訴えるという体裁をとっている。しかし、この絵は生々しい実感に富む反面、どこまで事実に即した情景なのかは容易に判断できない。本書は『絵師草紙』を読み解く作業の中で作者像を明らかにし、絵だけではないことばとの交流を通して、新しい史料としての絵巻の活用を試みる。
目次
1 絵師の訴え
2 描かれた一通の文書
3 復元された綸旨
4 ことばによる訴え
5 絵巻の見方
6 絵巻の仕掛け
7 兼好の素顔
8 2つの世界の交わり
9 系図を読む
10 絵巻の領域
11 絵師の正体
12 もう一つの絵巻
終章 絵巻への挑戦