中公新書<br> 江戸藩邸物語―戦場から街角へ

中公新書
江戸藩邸物語―戦場から街角へ

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  • サイズ 新書判/ページ数 222p/高さ 18X11cm
  • 商品コード 9784121008831
  • NDC分類 210.5

内容説明

戦乱騒擾の終焉とともに泰平の世を迎えた江戸時代、武士社会には新しい秩序と作法の整備を求める改革の波が押し寄せた。ことに、なにかと幕府の干渉を受ける江戸藩邸では、いらぬ争いや摩擦を避けるために、遅刻・欠勤の規約、水撒きの作法など、瑣末なまでの約束事が定められた。しかし、時代は変わっても武士は武士、体面もあれば意地もある。場所を戦場から江戸の街角に移して起こる悲喜劇に、変革期に揺れ動く武士の姿をみる。

目次

武士としては
〈職場〉の作法
路上の平和
駆け込む者たち
火事と生類をめぐる政治
小姓と草履取り
死の領域
見いだされた老い

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

saga

33
江戸前期、水戸藩傍系の守山藩が記した日記は、藩の公式記録として興味深い。また、幕臣・天野長重が著した思忠志集などの記録は、一武士の記録として微に入り細を穿つもので、当人のマメさを感じる。本書は上の二つの記録を中心に、藩邸を巡る江戸の面白さを伝えてくれるもので、時代小説を読む上でとても参考になる。時間の大雑把さとそれを守らせようとする管理職側、真の意味での鞘当とその後の斬り合い、藩邸の独立性、男色、武士に対する町人の強さなどを知った上で、また時代小説を読み進めたい。2014/09/03

ドナルド@灯れ松明の火

21
ようやく江戸が落ち着いて武士が戦場に出ることが無くなってから江戸の藩邸での暮らしぶりや武士の対面を保つための種々の取り決めが、旗本の書き残した「守山御日記」を元に紹介される。武張っていた時代から、時代がくだり、江戸城での事務的な仕事に携わりだんだんと軟弱に事なかれ主義的になっていく武士の実態がわかる。他の本と違って、衆道にまつわる話がこれでもかと挙げられやや引いてしまう。しかし武士が何を考えどうやって老いて行き死ぬのかがくっきりとイメージできる本であった。2014/03/16

mahiro

9
戦場で命のやりとりをするのが日常であった武士達が長い平和の時代に入り、命より名誉を尊ぶという彼らの誇りを様式や意地の中に変化させていった過程がわかる。本当にくだらないと思える理由で簡単に切腹したり成敗してしまう彼らも「武士の一分が立たぬ」にこだわる事が武士としての存在理由だとしたら仕方ないのかも。2016/06/02

印度 洋一郎

6
水戸家の分家筋に当たる守山藩の記録を中心に読み解く、天下泰平の時代に変容していく武士道、という本。江戸時代初頭は野蛮な戦士だった武士が巨大都市江戸で暮らしていく内に官僚化していく。特に、この本のテーマは17世紀~18世紀という武士の価値観の曲がり角の時代に、廃れていく殉死、時間を厳守する勤務体系、防火や生類憐みの令によって幕権に組み入れられていく藩邸など、各藩の江戸屋敷の動向から、その変化を探っていく。遅刻、無断欠勤、出勤拒否、飲酒、居眠りなど平気だった武士達が段々"文明化"されていく様が興味深い。2014/02/12

茶幸才斎

3
守山藩江戸藩邸の記録書である『守山御日記』等の文献記録から、17世紀後半の武士たちの日常の様々な出来事を通じて、職場や路上での振る舞い、駆け込み人や火事への対応、死体の取扱いなど、彼らの暮らしや思想、習俗をときにコミカルに活写した面白い本。意地や面子のために命を投げ出す武家社会の激しい気性は、時代が移ると次第に抑制され、代わって職場では事務処理能力が重視され、街なかでは合理的に争いを避けて円滑な都市生活や経済活動を優先するルールが設けられていく。今日に続く日本の公務員の気質の、これが原点なのかもしれない。2012/08/23

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