感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
なうなう
2
孤独と聞くと寂しいような印象を受けるのがほとんどだろう.あるいは,青年期特有のニヒリズムからしたら魅惑的なものと映るかもしれない.孤独の内容も多岐に渡る.例えば,自然との対話は孤独から生まれるし,幼少期のトラウマなどで孤独が深淵のように感じることもある.孤独になりたいと願う人もいれば孤独から開放されたいと涙する人もいる.そういった様々な孤独を形而上学的な文体を含めながら著者は解説している.自分を見つめ,世界との関わりを深く感じ入り,静寂の中で思索に耽る.そんな時間をこれからも大切にしていきたい.2014/10/31
Lieu
1
島崎藤村の親戚の精神科医だけあって、対象をまっすぐに「見よう」とする朴訥な文体は、藤村に通じる味わい深さがある。文学に造詣の深い昔かたぎの精神科医の著書は、「精神」の深淵を見つめてもつねに身体的実感を大切にしているので、西欧現代思想の言葉を武器として沢山蓄えている文芸評論家の書く文章よりも、私は好んで読んでいる。本書では、孤立がなぜ孤「立」であって孤「坐」でないかとか、宴会での二人の対話がどうしてたやすく中断させられるかといった文章にはっとさせられる。2022/08/29