内容説明
国の夜明けをたぐり寄せた女。勤皇のため、信州の伊那谷から単身上京した松尾多勢子。宮中に接近する一方、岩倉具視に直談判、久坂玄瑞に慕われつつ天狗党を助けた天衣無縫の女傑!書き下ろし歴史長篇。
著者等紹介
藤本ひとみ[フジモトヒトミ]
長野県生まれ。西洋史への深い造詣と綿密な取材に基づく歴史小説に定評がある。フランス政府観光局親善大使を務め、現在フランス観光開発機構(AF)名誉委員。パリに本部を置くフランス・ナポレオン史研究学会の日本人初会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Aya Murakami
90
読メのユーザーさんのおすすめで図書館で借りてきて読みました。 漢文よりも日本の古文や和歌を愛するヒロイン多勢子。漢文で点数稼いでいた自分としては多勢子がどのようなフィーリングで文章を読んでいたのか興味があります。激しさの中にも柔らかな感性を秘めていたのかも?尊王に傾く前は恋の和歌に凝っていたようですし。 多勢子を扱った作品には夜明け前という有名な作品があるとか、そして最終章の名前は夜明け前。夜明け前は他館の閉架に所蔵されているようなのでいつか読んでみたい。2020/08/02
春
15
とても格好いい女性だったんだなぁと、幕末素人ながらもとても楽しめた。どれだけ絶望しても、決して諦めない強さが素敵だった。もっと松尾多勢子さんについて知りたくなった。2015/06/16
あかんべ
10
現代のおばさんなら、こういうこともするだろうが、あの時代にしたとはすごい。上京して思っていたこととは違い、落ち込むがそのたび自分にできることを探して立ち上がるそのパワーに脱帽。なんとなく嫌な感じの岩倉具視が、輝く光に見えたのにも苦笑い。2014/11/13
HH2020
8
◎◎◎ 田舎の百姓の中年おばさん(本書では婆)が主役の痛快な物語。婆を侮ってはいけない。勤勉で歌に通じ、天竜川の精気を呑込み、京に行き、尊皇活動のため八面六臂の活躍をする。荒くれ男にも公家にも怖気ることがない。息子か孫のような若い男たちからは慕われる。この多勢子の行動力は、政を帝に取り戻すという一途な思いから来ているのだ。純粋だなあ。出だしの厠のシーンには引いたが、そのあとは物語の展開に没頭だ。生きる力を与えてくれる。お勧めの一冊。2015/04/20
逢日
6
矢鱈と好色な老婆だなぁと思って読んでいたら、実在の方なのにびっくり。藤本さんの脚色もあるのだろう。人物設定や軽々と貴人に接見する場面は、ホントかよと思いながら読んだが、筆力や表現力は流石の一言。里山や京都の情景が目に浮かび胸に染み込んでくる。珍しい平田派の話も興味部がかった。天狗党とのやり取りも見応えがあった。まかてさんの恋歌をまた読みたくなった。作者の幕末熱も巻数を重ねて益々加熱を感じる。岩倉や薩摩が登り詰める続編が読みたいものだ。そして長尾は生きていてほしい…2021/04/30