内容説明
明治以降、「西洋化」を追求、日露戦争後に「一等国」の地位を獲得し、唯一の非西洋国として列強に参入した近代日本。だが、待ち受けていたのは、昂揚する黄禍論、パリ講和会議における人種平等案挿入の失敗、アメリカの排日移民法制定など、西洋からの人種的排除であった。本書は、近代日本が人種的差異をいかに捉えられてきたのか、タブー視されてきたその心性の系譜を、洋行エリートたちの人種体験を通して考察する。
目次
序章 近代日本の自己矛盾
第1章 差別化という模倣―日清戦争後
第2章 “一等国”の栄光とその不安―日露戦争後
第3章 華麗なる“有色人種”という現実
第4章 「要するに力」―日独伊三国同盟とその前後
第5章 敗戦と愛憎の念
第6章 永遠の差異―遠藤周作と戦後
終章 近代日本の光と影
著者等紹介
眞嶋亜有[マジマアユ]
ハーバード大学ライシャワー日本研究所アソシエイト、ICUアジア文化研究所研究員、国際日本文化研究センター共同研究員。1976(昭和51)年東京都生まれ。2004年国際基督教大学大学院比較文化研究科博士課程修了。学術博士。日本学術振興会特別研究員、ハーバード大学ライシャワー日本研究所ポストドクトラル・フェロー、法政大学、国際基督教大学講師などを経て現在に至る。専門は近現代日本社会・文化史、比較文化論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
今庄和恵@マチカドホケン室/コネクトロン
3
読んでて途中で辛くなった。サイバラが洋ピンを見ていて国粋主義者になった、ってのを思い出した。ペリーが日本にやってきて、初めて「白人」を見た感想が、赤鬼みたいだ、ってのがありましたが、見知らぬ物を見たらそれまでの美意識にはないはずだから自分たちは醜い、って思うことないはず。威丈高な白人に負けちゃったのだな。白人にたいして卑屈になってないアジアの国はあるもの。グローバル化とは、白人による黄色いサルの支配なのだ。2014/12/01
ちり
2
“日本人の人種意識には、どうしても美醜という審美的意識が重きを占めていることを物語る系譜があるといえる”“日本人にとって、肌の色にみられる人種的差異を問うこと、近代を問うことは、ほぼ同じことを意味していたからである。なぜなら、日本にとって近代を論じるということは、ほかならぬ非西洋・日本の「西洋化」をめぐる自己矛盾を論じることを意味したからである”2020/09/20
awe
2
近代以降、日本は生き残りをかけ西洋化への道を選んだ。しかし西洋化とは日本の自己否定を意味するのであり、西洋化しようとすればするほど「非西洋」としての日本が首をもたげてくるという苦しみがある。人種的差異とは、まさに日本と西洋の間にある無数の差異の象徴である。本書は明治以降の日本の洋行エリート達の言説を分析し、その人種意識を探る。いろいろ、違和感の多い文章だった。日本は古代より周辺文明国として劣等感を抱くことが常になっており、それは近代以降も変わらないとか、差別意識は本能的だとか。2019/10/31
てつこ
1
20世紀初頭から戦後まで、日本人の人種的意識を探る一冊。日本は近代化するために西洋諸国をお手本としたが、それは白色人種の西洋と黄色人種の日本を分かつ人種的差異という憂鬱な宿命を可視化するものであった。日本が西洋化を実現するためには、日本自身を否定しなければならないという矛盾に陥る。欧米へ渡った近代エリートが受けた差別、米国の排日移民法、パリ講和会議での人種平等案の否決など、日本は人種的なコンプレックスを高めていく。一等国として特別視を望むが満たされない鬱屈が自己否定、自己醜悪視につながる。2020/11/03
takao
1
ふむ2020/10/20