象が踏んでも―回送電車〈4〉

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  • サイズ B6判/ページ数 235p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784120042355
  • NDC分類 914.6
  • Cコード C0095

内容説明

初の長篇詩、自作とその周辺、風景、写真、そして残像…線路は続く四十五篇。

目次

象が踏んでも
黒飴の瞳
おなじ名を三つ背負って
釣り針のような言葉
真夜中の庭に、ひとつの助詞を
純粋状態の白熊 シモーヌ・ヴェーユの『カイエ』から
仮設避暑地の陽光
疲れのかたち
一二六歩あるいて右
途切れたままの雰囲気を保つこと〔ほか〕

著者等紹介

堀江敏幸[ホリエトシユキ]
1964年生まれ。作家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

踊る猫

23
変わらないな、と思う。強烈な個性というものが存在しない、俗に言う「華」もなければ「美しい日本語」というのともやや異なる文章で書かれた作品なのだけれど、「相変わらずだな」と思わせつつも読ませるのは堀江敏幸の文章におおらかさがあるからだろう。ふくよか、と言っても良い。白湯にも似た味わい、あるいはミネラルウォーターのような美味しさ。特定の作家や作品について触れられた文章がやはり、強烈に脳裏に焼きつくというわけでもないものの、それでもこちらをうっとりとさせる。逆に言えば日常の些事はさほど面白くないように感じられた2019/08/27

踊る猫

18
一方では、勤勉に努力することを称賛する言説がある(三島由紀夫がその生き方において示したような?)。だが、堀江はその勤勉さを脱臼させる。堀江が勤勉であるとすればむしろ書かないで待つことを引き受けること、「なにかが起こるまでの長い待機」(p.153)の側に立つことなのだろう。これは確信がなければできないことだが、一方ではその確信は自分を越えた外部の存在に身を委ねることであって、そこにおいて同じく外部とチューニングして作品を書いていたと思しき田中小実昌を連想させる。どちらも文壇からはみ出しかねない知性派の存在だ2021/11/08

いのふみ

4
堀江さん、時折抜けてる。勤務先の大学での話、日常の話が特に味わい深かった。以外、防備録。「受け身が結果として積極的な意味を持ちうる無意識のトランスになりたい」「なにかが起こるまでの長い待機に耐え抜く意志と、それを禁欲的ではなしにだらだらつづけて飽きないある種の鈍さを備えた人間こそ物書きと呼ばれうるのだと考えている者として、その理想にいくらかでも近づくために、一日一日を『緊張感のあるぼんやり』のなかで過ごしたい。鈍さはこの経験とともにさらに鍛えられ、なにかをかならず呼びさましてくれるのだ」。2016/07/30

タカラ~ム

3
淡々と、というか、飄々とした感じのこの空気感がなんともいえないいい感じのエッセイ集。ヘタに盛り上げようというような、空回り気味のサービス精神が逆にしらけてしまう凡百なエッセイとは、まさに一線を画す世界観に嵌るとすごく楽しめる。2012/06/26

いのふみ

2
作中に、人を信じすぎる友人をうさん臭く思っていたら、彼が人を信じた結果他人の温かさに触れて、自分は心の濁りを感じた、というエッセイがあるが、こちらこそ堀江さんの静謐な文章を読んでおのれの心の濁りを感じている。2024/01/29

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