内容説明
益子徳一、七十二歳、独身。定年後の人生を慎ましく過ごす独居老人の大真面目で可笑しくて少しだけせつない日常。じんわり沁みる老人小説。
著者等紹介
京極夏彦[キョウゴクナツヒコ]
1963年生まれ。1994年『姑獲鳥の夏』でデビュー。1996年『魍魎の匣』で第四九回日本推理作家協会賞(長編部門)、1997年『嗤う伊右衛門』で第二五回泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で第一六回山本周五郎賞、2004年『後巷説百物語』で第一三〇回直木三十五賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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takaC
148
オジいサン、良かったね。(「オジいサン」の発音(アクセント)はよく分からなかったけど)2016/09/30
勇波
131
自分は病院でケースワーカーという仕事柄独居老人と接する機会が多い。ですが徳一氏のような方と接する機会はまずない。なぜなら徳一氏は困ってないからだと思う。世の中老人が困ってなかったら僕らの商売は成り立たないのかもしれない。主人公の徳一氏は時代に乗り遅れたり切り捨てられたりされた訳ではなく、うまく自分の立ち位置をわかってらっしゃるように思えます★2015/02/14
財布にジャック
95
これ京極さんですよね?間違ってませんよね?京極さんらしからぬ展開に、最後まで信じられない気分が抜けないまま終わってしまいました。京極さんの新境地なのかしら?それにしても京極さん72歳にはまだ程遠い年齢なのに、よくこのオジいサンの心の中を描けていて、びっくりしました。誰か身近にモデルのおじいさんがいるのでしょうか?独居老人の日常や頭の中を覗き見ているようで、なんだか申し訳ない気分にもなりました。しかし、主人公の益子さんはどこにでもいそうですが、生真面目で正直でいいオジいサンでした。2011/06/02
紅はこべ
82
定年になるまで勤め上げた常識的社会人にしては、徳一老人、世間知らずすぎないか。日常の所作一つ一つに細かくこだわって、よくここまで無事に生きて来られたものだ。心理小説の一種なのかな。京極作品は内的独白風が多いけど。但し『ダロウェイ夫人』のような詩的味わいはない。2015/12/30
紫 綺
73
京極さんの現代物、しかもなんとなく心温まるお話っぽいタイトル、ということで図書館にリクエスト。ところが、予想に反し、独身で身寄りのない独居老人の悲哀をひたすら淡々と描いている。最後の最後に、線香花火の末期のようにポッと温かい輝きを放ち、終わった。人によって、好みの大きく別れる作品だと思う。2011/06/26