出版社内容情報
音楽を愛し、映画監督を夢見つつ23歳で戦死した若者が残した詩は、戦後に蘇り、人々の胸を打った。主人公と同世代ライターが、戦場で死ぬことの意味を見つめるノンフィクション。
内容説明
お姉さんっ子で、レコード店の娘に恋し、映画監督に憧れつつ太平洋戦争に従軍、23歳で戦死した若者が残した詩は、時代を越えて人の胸を打つ。25歳の書き手による、瑞々しいノンフィクション。
目次
序 伊勢にて
第1章 姉と弟
第2章 伝えられてゆく詩
第3章 バギオ訪問
著者等紹介
稲泉連[イナイズミレン]
1979年、東京都生まれ。95年、神奈川県の公立高校を一年で中退。大学入学資格検定を経て97年、早稲田大学第二文学部に入学。同年、その体験を書いた手記「僕が高校を辞めると言った日」(『文芸春秋』十月号掲載)で第五十九回文芸春秋読者賞を受賞。2002年に同大学を卒業
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
がらくたどん
52
戦争で大変な数の人々が亡くなっている。どんな理由があるにせよご町内であれだけの殺し殺されをやったら一大事だ。仮に自国に国際世論に承認される大義があったとしても実際に現場で殺し合いをする人達の心を思うと苦しくなる。戦争が終わった後とかふと我に返った時の心。で竹内浩三。彼の詩は自分で読んでみるのが一番と思うのだが、本書は新聞の新刊文庫紹介コラムの選書が自分にはツボすぎる稲泉氏のルポなので。彼の詩が自分にとって切実な何かだと強く思えるという感覚を基底に彼の詩が伝えられた軌跡を追う。大義では諦めきれぬ命がある。2022/04/16
かおりんご
50
竹内浩三という学徒兵がいた。もし、彼が70年前の戦争で生きていたら、今頃は詩人か映画監督になっていたのだろうか。白木の箱には、彼の名前が書かれた紙が一枚きり。もっと浩三の作品が知りたいし、知って欲しいと思う。この本は、浩三の作品より、生きざまがメイン。2015/03/03
アイシャ
35
木内昇さんの『ブンガクの言葉』で紹介されていた竹内浩三氏についての取材本。この方の事を私は初めて知ったと思っていたけれど、「戦死やあわれ」で始まる詩、『骨のうたう』は知っていたのでびっくり。終戦の年に23歳で戦死した浩三は、青春を謳歌し、映画監督になるのが夢という、明るい青年だった。彼の書く詩は、実に平易で、わかりやすく、それだけに突然兵隊に駆り出され若くして亡くなるという事実は哀しい。戦争はいけない。人からすべてを、家族を、友人を、日常生活を、夢を、すべてを奪うのだ。もっと彼の作品を読みたかった。 2022/06/13
馨
33
映画監督になるのが夢だった竹内浩三さんが、戦地で書き綴った詩や日記から彼の人生、戦争を見た気がします。 当時の若者は詩や俳句を作るのが上手くて驚きますが、彼の作品も心に突き刺さるものがあります。実際あの時代に生き、戦争を経験した者でないと書けない複雑な思い、自分の見た戦争を伝え、生きた人生を伝えたいと戦地でも必死で書き綴ったんだろうなぁと思います。あの時代の若者にしては、少し今の時代風な考え方を持つ方だなぁと思います。浩三さんが戦死される前日記は途絶えたけれど、最期までをどんな思いで過ごされたのか。。。2015/06/04
駄目男
16
「栗田艦隊、謎の反転」というのを知っているだろうか。レイテ湾に上陸した米軍に対し、戦艦大和を率いる栗田中将がレイテ湾を目前に、謎の反転引き返した事で、本来なら大和の巨砲で米軍を木っ端みじんに出来る最大にのチャンスをみすみす逃してしまった。山下大将率いる第25軍はマニラで熾烈な攻防戦をするというのに。フィリピンの山野で飢えとゲリラと狙撃によって果てた47万の日本兵。2021/08/20