出版社内容情報
社会主義からニーチェまでをも幅広く渉猟した優れた知識人にして、永遠の恋人クラレッタに出会うまでのその多彩な女性遍歴―イタリア・ファショ指導者の既成像を一新する画期的評伝
内容説明
社会主義からニーチェまでも渉猟した優れた知識人。永遠の恋人クラレッタと出会うまでの多彩な女性遍歴―。イタリア・ファショ指導者の既成像を一新する画期的評伝。
目次
序章 ムッソリーニというイタリア人
第１章 鍛冶屋の息子
第２章 放浪と反抗の時代
第３章 ローマへの道
第４章 全体国家の形成
第５章 女性遍歴
第６章 試練としての戦争
第７章 幻の共和国
終章 ムッソリーニの神話
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Hepatica nobilis
19
イタリア外交官が日本語で著したムッソリーニ伝。生い立ちから権力の絶頂に至るまでを丹念に語るのに比べて後半はやや駆け足。ムッソリーニという不人気な有名人の実像は、数か国語を自在に操り、文学哲学に造詣が深い知識人。左翼思想に染まって、やがて独自のファシズモ思想を形成していく。独裁者としては冷酷さに欠けたというこの人物はイタリアではさほど忌み嫌われず、むしろ肯定的な評価も多い。イタリア人として、もっとこのムッソリーニという、「二流の独裁者」としてだけ見られる人物を知ってもらいたかったということか。2017/03/25
funuu
17
佐藤氏の言う ナチズムとファシズム。ヒトラーとムッソリーニ。の違いが理解できる本。「社会主義からニーチェまでも渉猟した優れた知識人である一方、永遠の恋人クラレッタと出会うまで多彩な女性遍歴をもつ…。イタリア・ファショ指導者の既成像を一新する評伝。 」この2人と比較すると昭和天皇はやはり英明であり、また、情に流されないリアリスト。日本人は幸運だった。この本からすると、安倍首相はソフトファシズム路線。2017/05/07
富士さん
5
再読。個に収斂していく流れへの反作用として集団に収斂する、社会主義の20世紀的発展形としての思想運動であるファシズムの意義が示されているのが本書の魅力だと思います。しかし、政治運動と不可分ということでやむを得ないのかもしれないのですが、ファシズムへの再評価だけならともかく、ムッソリーニという個人にそれがリンクされるとひいきの引き倒し感があります。ムッソリーニへの軽視はイタリアへの軽視、という著者の気持ちはわかりますが、他人の作った評価軸でイタリアを評価したいという強がり自体に問題があるように思うのですが。2018/12/31
デューク
4
「イタリア人の歴史的記憶の中では、ムッソリーニの時代は社会が安定し、国家機構が順調に機能していた明るい時代」。そう語る筆者による、ベニート・ムッソリーニの伝記。自国民からはドゥーチェ(指導者)と呼ばれ、敵であるはずのチャーチルやルーズベルトからも偉人として評価されている。官僚組織を改革し、女性参政権を認め、ヴァチカンの独立を進め、しかも自身は質素で謙虚な態度を崩さない。イタリア史において、国民全体を指導し、国民全体から支持を集めた最初で最後の人物であった。歴史の見方が変わる一冊。おすすめ2016/08/29
koji
3
ベニートムッソリーニ（１８８３－１９４４）は、ロマーニャ地方生まれの鍛冶屋の息子。激しく直情的で教育水準は高い。社会主義、人道主義、超人思想を混合してファショへ。。ラケーレ（妻）、アンジェリカパラーバノーヴァ、マルゲリータサルファッティ、レーダラファネーリ、イーダダルセル、そしてムッソリーニと共に殺害されたクラレッタ。実に派手な女性関係。挑発的な演説を繰り返す内閣総理大臣。ヒトラーと運命を共にしたファシスト。そして、ローマ帝国の末裔と二流民族という自虐性を持つイタリア人に殺された複雑怪奇な運命。2011/05/25
