内容説明
平和の到来が兵法から兵学へと転換をうながし、欧米列強の圧迫が近代戦略論への深化をもたらした。林羅山から、荻生徂徠を経て、吉田松陰に至る近世思想の知られざる相貌に光を当てる。
目次
序章 「医理」即「軍理」
第1章 兵学的思想とは何か
第2章 危機と泰平の間―林羅山
第3章 軍学から兵学へ―山鹿素行
第4章 歴史思想と兵学―新井白石
第5章 政治と軍事の間―荻生徂徠
第6章 「軍略」と「軍法」―荻生徂徠の『〓録』について
第7章 世界史の中の江戸兵学―頼山陽、林子平、蒲生君平
第8章 兵学の季節としての幕末
第9章 維新前夜の兵学
第10章 危機の兵学と兵学の危機―吉田松陰
感想・レビュー
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ホンドテン
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図書館で。役に立たないと評されることの多い江戸の兵学思想をクラウゼヴィッツの『戦争論』と対置させるという試みは著者らしい。江戸の儒学(朱子学)つまり「王道」に対しての「危道」として常に劣位の中にあり続けた兵学の太平の時代への緊迫した関係など、自分は前提からして知らなかった。序文で意気込む著者の意図と懸け離れ『配所残筆』に残された若き山鹿素行と死線を潜り抜けてきた古武士、侍大将、渡辺睡庵との対話のエピソードなどは理解する以前に、強い感動を覚えた。『甲揚軍艦』の記述に対する白石の冷めた見解も新知見。2005/06/06
ygreko
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荻生徂徠はもう少し掘り下げて行く予定。形勢・虚実・正奇を軸にした孫子訳解。2011/09/07