出版社内容情報
戦乱をよそに銀閣を建て文化の“守護神”となった将軍・義政や、一休、紫式部など、様ざまな人物から、日本人の美意識の源流に迫る。
知っていましたか、日本人が大切にすべき「美」の原点が、どこにあるかを? なぜ、派手なものより渋いものを好むのか。なぜ、均整のとれすぎたものより少しくらいゆがんだもののほうがいいのか。日本人の文化に対する嗜好や美意識の源流を室町時代に探す『足利義政と銀閣寺』。そして、範囲を平安時代から明治時代までに拡げて、世界に類のない日本文化の特質に迫る『日本人の美意識』などを収録。
内容説明
京の都を燃やす戦乱をよそに、東山山荘を築き、連歌・茶の湯・生け花・建築・造園など、あらゆる文化の「先達」となった将軍に光を当て、今日につながる「美の流れ」を追った『足利義政の銀閣寺』。日清戦争が日本の文芸をどう変えたかなど、他の誰にもない視点から感性の心髄に迫る『日本人の美意識』。日本語と翻訳の難しさを綴った『私の日本文学逍遙 言葉と書をめぐって』の三作品を収録。
目次
足利義政と銀閣寺(東山時代と燻し銀の文化;父義教の暗殺;乳母と生母の狭間で ほか)
日本人の美意識(日本人の美意識;平安時代の女性的感性;日本文学における個性と型 ほか)
私の日本文学逍遙―言葉と書をめぐって(日本語のむずかしさ;日本近代文学の外国語訳;好きな詩 ほか)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ブルーツ・リー
4
この巻に関しては、文学書、というより、歴史書とか、教養書という印象を持ちました。 表題の足利義政については、足利三代将軍義満の時代から、何と10代将軍義稙の時代までを書いてくれていて、足利家全盛期から、応仁の乱が泥沼になっていく過程が、当時を生きた文化人の解説とともに、詳しく解説してくれていました。 一応、足利義政の話が主ではあるのだけれど、足利義政のわびさびを、足利義満と比較してみたりだとか、政治家としては確かに無能だったにしても、文化の庇護者としての足利義政に再評価を求める内容となっていました。2020/04/19
hiroizm
3
著者の自伝に頑張って書いたとあって読んだが、足利義政や東山文化についてこれほど明解で読んでて面白い論考ってあったかな!ってなくらいハマってしまった。河原者と日本庭園の関係などなど興味深い観点もあって秀逸。「日本人の美意識」の戦争と文化の論考もよかった。この人の著作集、全部読破する予定です。2018/07/14
秋津
0
「史上最悪の将軍」足利義政の、美意識とその実践について焦点を当てて論じた一冊。銀閣寺に始まる建築様式や、連歌、茶の湯など、今日にも生き続ける日本の藝術の原型が彼の時代に生まれたこと、そしてそれが義政の、激動の時代にありながら、それを御する政治の流れなどに頓着せず、ひたすら美を探究するという、狂気にも似た情熱に基づくものであったことを紐解いていきます。「咲満ちて花より外の色もなし」という彼の歌は取り立てて秀逸なものとは言えないながらも、彼の美に対する情熱とそのほかのことどもに対する冷淡さを伺えるのかなと。2014/11/08