出版社内容情報
この6月に90歳、卒寿を迎えるキーン氏。荷風、谷崎に始まり川端、三島、安部、司馬らとの親交や文学論を書けるのも、氏ならでは。
荷風や谷崎との対話を、三島や司馬との親交を、いま書けるのはキーン氏だけ! この六月に九十歳、卒寿を迎えるキーン氏。谷崎潤一郎、永井荷風といった伝説的大作家ともじかに文学論をかわしてきた。川端康成、三島由紀夫、安部公房、司馬?太郎らと親しく交わったキーン氏だからこそ、作家の人物像は立体的であり、作品論はこの上ない深みをもつ。近現代の作家約60人を、さまざまな角度から描く。
内容説明
2012年6月に90歳を迎えたキーン氏。長年の研究と作家との交友をもとに描いた表題作では、谷崎潤一郎、川端康成、三島由紀夫、安部公房、司馬遼太郎をつぶさに論じた。みずから日本語で書きつづった『日本文学を読む』は、近現代の主要作家・詩人を網羅。近現代作家論の「決定版」。近現代の作家の知られざるエピソードをふんだんに披露。
目次
思い出の作家たち―谷崎・川端・三島・安部・司馬
日本の作家(鴎外の『花子』をめぐって;子規と啄木 ほか)
日本文学を読む(二葉亭四迷;尾崎紅葉 ほか)
私の日本文学逍遙―現代作家をめぐって(二十二年前の三島由紀夫;三島由紀夫と日本の現況 ほか)
声の残り―私の文壇交遊録(火野葦平の屈折;阿部知二に出会って ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちゃっぴー
12
谷崎、川端、三島、阿部、司馬について書かれた「思い出の作家たち」の他「日本の作家」「日本文学を読む」「私の日本文学逍遥」「声の残り」が収録されている。親交のあった作家たちとの交遊録や「日本文学を読む」では二葉亭四迷から大江健三郎まで49人についての作品・作家論が書かれていて特に谷崎・川端・三島のエピソードはワクワクしながら読みました。キーンさんの日本文学への造詣の深さと日本文学愛を感じます。2020/09/15
ふくとみん
4
「思い出の作家たち司馬遼太郎」海外で評価が難しい、そもそも翻訳がしにくいことなど司馬遼太郎に親しみを感じる日本人(私は全て読んだ)には鋭い指摘であった。そのキーンさんももういない。「日本の作家三島由紀夫論」には感心した。読みかけたままの「豊饒の海」を読まなくては。2024/02/04
ブルーツ・リー
4
ドナルドキーン先生が、親交のあった作家との思い出を、ひたすら書いていった巻。しかし、それだけで600頁行くというのが、恐ろしい。 いつも通り、分かりやすい日本語で、谷崎潤一郎から大江健三郎に至るまで、日本の大作家との交流について、ひたすら書いてくれている。自分にとって、未読の作家が殆どで、ドナルドキーン先生は親交があっただけではなくて、実際登場したほとんどの作家の作品を読んで居る訳で、これはのんびりしていられないな、と思った。ドナルドキーン先生が生きた時代だけでも、読むべき作家は、これだけ居る、という事。2020/02/02
壱萬弐仟縁
3
島崎藤村の詩について、「私は日本人ではないからこの詩を絶賛する日本の学者のように余韻に敏感でないかも知れない」(302ページ)とは、謙遜しておっしゃっているのだろうが、シェリーとの比較がなされている。日本語で書くのは大変ではないか、と思えるが、評者が英文学を英語で書けるかどうか。かなり難しいことだと思える。ただ、著者は心残りとして日記をつけなかったことを後悔している(541ページ)。ブログも大事だろうが、本備忘録も日記のようなものであるので、大事にしたい文化だともいえる。分厚い本で全部は理解できなかった。2012/12/07