内容説明
ヴェトナムの戦場を肌で感じ生と死の異相を鋭く凝視した『輝ける闇』。官僚主義への痛烈な風刺を軸に美味の本質を見事に捉えた『新しい天体』。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
高木康宏
1
印象に残ったのは主人公が言っていた「もし書くとすれば匂いですね。 いろいろな物のまわりにある匂いを書きたい。匂いのなかに本質があるんでうから」というセリフだった。 作者の作品を何冊か読んだが匂いのする表現が多いような気がした。 匂いのなかの本質とは何か、考えながら再読しようと思った。2018/09/26
あかふく
1
確実なもの、「ほんもの」がないとすれば、様々な物を背負うことにどのような意味があるだろうか。「ほんもの」を求めて行われたはずのベトナム戦争従軍だったが、最後の場面は蟻の風景と、「森は静かだった。」という文章で終えられてしまう。必死に体を丸めた開高は少しでも何かを持とうとしたが、最後には発散していってしまう。これは『新しい天体』でもそうだ。様々なものを「食いつぶした」末にある結末は、当然「排泄」である。このどうしようもない無為と対峙し、それでも確実なものを求め、挫折すること、これが今後の開高のテーマとなる。2013/09/27