出版社内容情報
戦後70年記念出版。たじろがぬ眼で真実をみつめた戦史小説の金字塔! 綿密な取材をもとに、明晰な筆致で抉り出す“戦争と人間”、その真実の姿――。1巻には、零戦の開発から、その末路までを描く『零式戦闘機』と開戦前夜の緊迫のドキュメント『大本営が震えた日』他、2巻には、巨艦「武蔵」をめぐる人間ドラマ『戦艦武蔵』と軍艦事故に隠された帝国海軍の暗部を描く『陸奥爆沈』他を収録。語注付き。
内容説明
緻密な取材と強靭な文体。私たちは、あの戦争から生まれた。対米戦争に向けて大本営の緊迫は頂点に達し、堀越二郎たちは新たな戦闘機作りに全力を尽くす―。軍隊・戦時用語注付き。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころりんぱ
55
「零式戦闘機」確かに生み出された時は世界一の性能を持っていたのだとわかりました。最先端の飛行機を運んだのが牛や馬だったということ、戦局が厳しくなると女子中学生まで動員して増産したことが、相当な無理をしての戦争だったと物語っていると思いました。「大本営が震えた日」太平洋戦争開戦前1、2週間ほどの出来事が細かに描かれています。真珠湾、マレーへの奇襲攻撃について、ほんの一握りの人間しか知らなかったこと、これでもかというほどの綱渡りの秘密作戦。大本営震えまくりで、これでよく奇襲できたなという感想を持ちました。2015/11/09
たつや
2
零戦についてまとめられた一冊。別の本と併読したが、分厚くて、少し辟易とした。子供の頃、たまに目にした零戦の文字や響きはかっこ良かったが、戦闘機と思えば、これを操縦する人は死を覚悟する。編集して、文庫にして欲しい一冊です。2024/01/11
おい
2
零戦誕生のように他作品で知られている史実より様々な開戦前夜の様々な出来事をまとめた作品の方が、臨調感が感じられ、面白かった。 ★★★2018/03/18
マウンテンゴリラ
2
本巻に収められている二編の内、零式戦闘機は再読であるが、巻末の保阪氏の解説と合わせて読むと、また新たな感慨を持つことができた。確かに当時、世界を驚愕させた戦闘機とそれを産み出した産軍官の体制の一面における優秀性と、それゆえの悲劇を描いた物語ではあるだろう。しかし、それ以上に、その開発、製造、運搬、運用にすべてを燃焼させた人間達の物語であることを強く感じた。後半の「大本営が震えた日」についても同様、あるいはそれ以上に人間の物語を感じさせられた。歴史にifを語ることの無意味さを承知の上で、→(2)2016/11/26
まいご
1
最新鋭機と牛車。日本のいびつさを象徴する取り合わせ。零戦量産に挙国体制を敷きながら輸送路整備すら思い至らない。壮大な奇襲計画を作りながら遅延や不測の事態を考慮しない、そもそもが希望的観測。命がけで手に汗握る現場でのサスペンスと、それを塗りつぶす大局的なお粗末さ。実情を顧みない指導層と、非正規な工夫と心身を削ることで応じる現場。それで凌いでしまうので大事に至るまで問題にされない。この悪弊が、多大な犠牲を払った敗戦と70年を経てもなお継承されている事に絶望してもよいだろうか。 2022/10/07