感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mustache
1
後醍醐天皇の新政はすぐにほころびが目立つようになり、足利尊氏の反攻が成功する。しかし新田義貞や楠木正成の知略によって、勢力的には小さい後醍醐側も健闘して、最終的には尊氏側は総崩れになる。この軍事的敗北を尊氏自身は戦術の巧拙ではなく、自分が朝敵となって天皇に弓引いているせいだと考えて、光厳上皇から院宣を引き出そうととする。「天下を君と君との御争ひに成」そうというのだ。武家は天皇に対し最大の敬意を払いはするものの、所詮は戦闘を勝利に導くための御札のようなものに過ぎない。この辺りの認識が実に興味深く叙述される。2015/03/10
えぐざいる
0
鎌倉幕府滅亡→あっさり建武の新政崩壊→尊氏決起のめまぐるしいなかで、能書きとしての倫理観ほぼ欠如で右往左往し、そして滅んでいく人間の有様のリアルな描写が面白かった。生生しい戦や生き死にの描写もここまで有り体だと、生きている事の強烈な肯定感を感じます2009/06/22