内容説明
天下取りの野望を胸に秘め、将軍を女色で籠絡するなど、小説やドラマで典型的な悪役に描かれる柳沢吉保。しかし、史料を丹念に読み込むと、見えてくるのは意外な実像だった。将軍という最高権力者の周囲に絶えず渦巻く、追従、羨望、嫉妬、憎悪…。将軍の最も側近くで仕えた吉保にとっては、悪名は宿命だったのか。将軍とその側近の実像に迫りながら、「武」から「文」への転換期の政治と権力の姿を鮮やかに描き出す。
目次
プロローグ―なぜ「柳沢吉保」なのか?
第1章 柳沢吉保は側用人ではなかった?
第2章 悪の権化像はいかに作られたのか?
第3章 「莫大な権勢」の真実
第4章 吉保の宿命
エピローグ―柳沢吉保と「忠臣蔵」
著者等紹介
福留真紀[フクトメマキ]
1973(昭和48)年東京都生まれ。東京女子大学文理学部卒業。お茶の水女子大学大学院博士後期課程修了。博士(人文科学)。日本学術振興会特別研究員、東京大学史料編纂所特任研究員などを経て長崎大学准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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れみ
82
江戸時代、五代将軍・綱吉の側近として名を成した柳沢吉保の実像について考察された本。考察するために紹介された史料を色々読んでいるうちに徳川家のもとでの安泰や永続を保ったり家の権威を示すために柳沢家はもちろん各大名家が色々と一生懸命だったんだなあという印象を受けた。本当のところの吉保像というのは想像のなかにしかない部分も多いけど慎みを大事に将軍に尽くすものの周りからは理解されないことに悩む吉保をドラマとかで見てみたい気はする。もちろんイケメン俳優さんに演じてもらいたい。誰がいいかなあ。2016/04/17
糜竺(びじく)
21
悪役として描かれやすい柳沢吉保が、意外と実直で慎みの人であることが分かった。2024/03/26
calaf
9
柳沢吉保?そんな人、聞いた事ない...そもそも何て読むの???という知識しかなかった私 (爆) 悪名高いですが、実は慎み深い人だったと解説されても、そうなの?という感じかも (大汗) そうか、忠臣蔵の頃の人だったのか...というか、忠臣蔵が5代将軍綱吉の頃の話だという事さえ知らなかったのだけど (^_^;;;2012/09/03
TERRY
4
「側用人は公的な役職ではない(将軍の私設秘書、代理人、あるいは執事)→公的な書類が残らない→研究対象が二次的資料とならざるを得ない→悪役の風評に引っ張られる」という柳沢吉保の悪名が継続するプロセスはよく分かりました。それにしても、悪役を作って糾弾し、溜飲を下げる庶民の姿は、江戸時代も現代もあまり変わらない(笑)2018/02/05
中島直人
3
忠臣蔵絡みでしか見たことがなかった柳沢吉保という名前。控えめに生きた誠実さのみが取り柄のよう普通の存在が、歴史、時という魔物により極悪非道の姦物に仕立て上げられてしまうことに空恐ろしさを感じた。恐らく生類憐みの令等の将軍の施策に不満を覚えた民衆の不満が、直接非難することのできない将軍の身代わりとして、新興の成り上がり者である側近に向かったのではないか。それにしても、近年、反日デモの頻発する中国の姿に重なって見えるのだが、どうだろう。2013/02/07