出版社内容情報
経済が、絆が、国が壊れていく──。
人間の魂の大恐慌がはじまった。未曾有の混沌を生き抜くために、いま私たちに必要なのは≪覚悟≫である。
すべてのページに胸を刺す言葉がある。
人として本当の強さとは何か。人間存在の根底から語られる全七章。
内容説明
そろそろ覚悟をきめなければならない。「覚悟」とはあきらめることであり、「明らかに究める」こと。希望でも、絶望でもなく、事実を真正面から受けとめることである。これから数十年は続くであろう下山の時代のなかで、国家にも、人の絆にも頼ることなく、人はどのように自分の人生と向き合えばいいのか。たとえこの先が地獄であっても、だれもが生き生きした人生を歩めるように、人間存在の根底から語られる全七章。
目次
第1章 時代を見すえる
第2章 人生は憂鬱である
第3章 下山の哲学を持つ
第4章 日本人に洋魂は持てない
第5章 他力の風にまかせること
第6章 老いとは熟成である
最終章 人間の覚悟
著者等紹介
五木寛之[イツキヒロユキ]
1932(昭和7)年福岡県生まれ。早稲田大学中退後、編集者、ルポライターなどを経て、『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞、『青春の門筑豊編』他で吉川英治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
寛生
58
【図書館】五木さんは心に大きな傷を負わされた人なのだろう。本書の最後の方で描写されている、ご本人のまだ幼い頃平壌から引き上げてくる際の描写を読みながらそう思わされる。後半、それも最後の方で、僕自身の理解が可能となるが、読通すのは容易ではなかった。それは、五木さんの文面から匂う感覚、文の肌の感覚が、どうしても厭世観で蔓延していて、息苦しいというよりも、八方塞がりしかないような感覚をこちらの読み手にもたらせるからだ。だが、それも、彼のトラウマを思うと納得できる。彼は本当に苦しみ、悲しんでいる人なのだと感じる。2014/06/02
のし
40
深い本でした。何度も読めば、また、違う感想を持てると思わせる本。様々な体験、考えを知ることができました。また、このような本があれば読みたいです。2014/12/13
ネジ
39
★★★★★ バブル崩壊後から漂う閉塞感に対し、これからは地獄を生きていくと覚悟することで視界が開けるとした内容。仏教の思想をベースとし、人間は常に苦しみを内包していること、いかに生きるかではなく生きて在ることこそ価値があるとした考えは非常に共感できた。 ①トスカ、サウダージなどそれぞれの国に人間の苦しみを指す表現がある。 ②下山の哲学:老いることは嘆くのではなく、現世から徐々に離れていく尊重すべきこと ③我々は苦しみを抱え生きているだけで価値がある。自分は誰にも代えられない存在ゆえ尊い。(夜と霧に通ずる)2023/12/29
団塊シニア
36
諦めることとは明らかに究めること、はっきりと現実を見据えること、それが人間の覚悟であるという筆者の考えは前向きにとらえることができる。固定しない人づきあい、ずっと長く一緒にいたい人間とは意識的にある距離を置くようにしてきたライフスタイルには共感できる。2013/05/13
佐島楓
30
ひとことではとても言い表せない内容。ただ、私自身が読書してきた中で、なぜ哲学や心理学、宗教を信じる人の心の有り様ということに関心を抱き続けてきたか、ほんの少しではあるが理解できたような気がした。これからも苦しみながら考え続ける人でありたい。2013/01/06