内容説明
軽躁なるものを勇豪とみるなかれ、かつて戦国の名将はそう戒めた。国を誤る指導者の愚があり、滅亡の淵から救い出した見識もあった。英国流の智恵とユーモア、フレキシビリティを何より重んじた海軍の想い出…、歴史の中へ喪われゆく日本人の美徳と倫理をあらためて問うとともに、作家生活六十年の見聞を温め、いかなる時代にも持すべき人間の叡智を語る。
目次
第1章 日本人の見識
第2章 英国人の見識
第3章 東洋の叡智、西洋の叡智
第4章 海軍の伝統
第5章 天皇の見識
第6章 ノブレス・オブリージュ
第7章 三つのインターナショナリズム
第8章 孔子の見識
著者等紹介
阿川弘之[アガワヒロユキ]
1920(大正9)年広島県生まれ。東大国文科を繰上げ卒業、海軍に入り、中国で終戦。戦後、志賀直哉に師事。99年に文化勲章を受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さきん
38
海軍のエピソードや歴史的な人物に対面した経験談が面白かった。海軍出身ではあるので、海軍びいきなところがある。2017/02/03
やっち@カープ女子
35
大正の生まれで、戦争を経験された方の見識なので説得力があります。興味深い話は、東條英機の悪口と孔子の見識。それとユーモアの大切さは国家の品格の藤原さんと同じ考えでエピソードも面白かったです。2013/08/10
カブトムシ
34
阿川弘之が、志賀直哉に師事したのは、他にはなく、阿川自身の意志による。志賀は結果として、多くの門下生を持ったが、阿川と同じで皆がその門を叩いている。「小説の神様」の称号も皆が勝手にやったことで、自分は関わっていない。この本は阿川の通例で、志賀直哉が恩師として登場している。志賀は、先の大戦の東條英機に批判的だが、阿川もこの本で、東條英機が、戦後に際して自殺を果たせなかったことに批判的だったと記憶している。読者の意見が別れるところかもしれない。私は、恥ずかしながら阿川の短編や随筆のみしか読めなかった。
キジネコ
28
大人にとって大切なものはknowledgeより wisdomであり、其れをはかるのは humourとflexibilityだと教えています。もっと堅苦しい本なのか?と始め心配していましたが 随分柔らかな文章と滑らかなリズムが文末の一句まで損なわれず見習いたい お手本の様な文章を堪能したしました。対象を咀嚼し消化し自分の言葉に置き換える時 自身の理解の深さが問われます。分かったふりをして小難しい言葉を連ねて得意になるのではなく簡単な言葉に置き換えてcoreを明示し言辞に血脈体温を込める そんな人になりたい。2013/09/23
saga
27
編集が決めた書名と著者のコンセプトが多少違うが、それでも英国のジェントルマンシップと武士道、そしてその流れを汲むネイビイズムの話は十分に楽しめたし納得のいくものだった。昭和天皇の見識を知り驚くとともに、天皇崇拝を唱えながらも、天皇の意思に反し、戦争へ突き進んだ軍部の姿に憤りを感じた。儒教については是非があるかも知れない。しかし、論語を聖典扱いせず、伝記的言行録として読むなら、別の解釈ができるかもと思わせる筆致がここにはあった。本書を読むきっかけは宮脇俊三氏のエッセイであることを付記する。2013/09/12