内容説明
奇跡的な高度成長を成し遂げ、石油ショックにも対応できた日本が、1990年代以降のグローバル化とITの活用に立ち遅れているのはなぜか?それは、第2次大戦中に構築された「戦時経済体制」が、現在も強固に継続しているからだ。「戦後は戦時と断絶された時代」という常識を否定し、「日本の戦後は戦時体制の上に築かれた」との新しい歴史観を提示する。
目次
第1章 焦土からの復興
第2章 高度成長の基盤を作る
第3章 高度成長
第4章 国際的地位の向上
第5章 石油ショック
第6章 バブル
第7章 バブル崩壊
第8章 金融危機
第9章 未来に向けて
付録
著者等紹介
野口悠紀雄[ノグチユキオ]
1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業。64年大蔵省入省。72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)取得。一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年より早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主著として『財政危機の構造』(80年サントリー学芸賞)、『バブルの経済学』(93年吉野作造賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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おさむ
41
「戦時経済体制(1940年体制)」論者で知られる野口悠紀雄氏。間接金融中心の金融、直接税中心の税体系、公的年金、資本と経営の分離といったしくみは、高度経済成長を支えた一方、その強固で変化しないシステムが現在までの日本の経済停滞をもたらしている。「まともな社会主義経済」というネーミングは的を射てます。本著はそんな野口史観に基づいた経済史。文学作品や個人史もまじえつつ、来し方を振り返ります。バブルの生成と崩壊のエピソードが多いのは、それだけ強烈だったからなんでしょうね。2017/06/20
James Hayashi
23
週刊新潮に連載されたもので読みやすい。戦後の経済システムは戦時中に既に築かれた。しかし1990年以降不全に陥ったのは、大量生産体制が終息しソフトウェアや知識が中心的な役割を果たしたため。株価で見ると2007年は1991年の7割ほど。だが米国は5倍になっている。英国は金融業を中心に復活。途中でギブアップしたが、10年ほど前の記述から何も変わっていない日本(重厚長大な製造業)。新しい社会システムが必要と思われる。2016/09/13
masabi
22
【要旨】戦時体制と戦後の経済体制の連続性(1940年体制)を強調し、日本の不況の原因をこの体制に求める。【感想】1940年体制は個よりも全体を重んじるため製造業には強いが、個の独創性が不可欠な知識・ソフトウェア関連の事業には弱い。未だに不況下にあるのは新体制への刷新ができていないせいだとする。1940年体制という仮説をもとに戦後の経済成長とバブルの崩壊を鮮やかに説明したのは見事だった。次は1940年体制についても調べる。2016/10/24
nori
9
It is basically agreeable. However he must say 1955 System should be successful sample of state socialism but socialism. Moreover he stopped writing upto 2000 despite it was published just before Lehman Shock. Why? Was contradiction found by himself? 2017/09/07
Yasuhiko Ito
7
2008年出版の本だけど、今更ながら読ませていただきました。日本経済だけが世界から取り残され、ジリ貧なのは「戦時経済体制」が未だに続いていたからだということがよく理解できました。2018/09/02