内容説明
『万延元年のフットボール』を書きあげた小説家は、1968年、意欲的な連続講演をおこなった。文学とはなにかを問い、沖縄とアメリカを考え、映画と明治百年と犯罪を論じ、往生要集やヌーボー・ロマン、そして核時代の生き方をめぐって語り続けた。今こそ鮮明な11のメッセージに、2007年の新たなエピローグを付す。
目次
プロローグのための短い小説=沈黙の講演者
戦後において確認される明治
文学とはなにか?
アメリカ論
核時代への想像力
文学外とのコミュニケイション
ヒロシマ、アメリカ、ヨーロッパ
犯罪者の想像力
行動者の想像力
想像力の死とその再生
想像力の世界とはなにか?
限りなく終りに近い道半ばのエピローグ
著者等紹介
大江健三郎[オオエケンザブロウ]
1935年、愛媛県生れ。東京大学仏文科卒業。在学中に「奇妙な仕事」で注目され、1958年に「飼育」で芥川賞を受賞。以後、つねに現代文学の最先端に位置して作品を発表し続けてきた。1994年にはノーベル文学賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おやぶたんぐ
2
随筆、ではなく、“想像力″をテーマに行われた連続講演録。50年以上前でありながら、その本質はそのまま現代の課題となる。演者が当時30代前半だということに改めて驚嘆せざるを得ない。語りの中では、社会全体、他人に対する想像力(イマジネーション)と言葉の重要性が幾度となく繰り返される一方、共感や共同体については基本的に言及されない。代わりに(?)出てくるのは、肯定、否定を問わないコミュニケーションである。2023/06/19
発起人
0
現在の視点で批判することはたやすいが社会変革・民主主義へのコミットメントは不変 ─激動の1968年に大江健三郎が行った講演録2012/11/30
que
0
今読んでも十分刺激的で面白い。2012/05/23
@第2版
0
1968年の全11回に渡る連続講演の記録。以前のエッセイと比べて読みやすく、論理構成も幾分解りやすかった。大江健三郎の思想・エッセンスが限りなく濃縮されてい、文中に個人的に引いた下線が他のどの作品よりも群を抜いて多かった。原爆、沖縄問題を下地に、想像力の有効性を力強く訴える文章「核兵器による戦争に抵抗しうるとして、そのためにまずなにが必要かと考えますと、(中略)核戦争とはどういう悲惨なものかということを日々、想像する力をもちつづけているほかにはない。(中略)その日本人が核戦争の悲惨を具体的に記憶しつづける2020/02/11