内容説明
向学心は人間の一生をつくる出発点でその対象は、偏差値で計られるものだけではない。では、何なのか、一体どんなものなのか。偏差値教育だけで育った人には分らないこの問題を本書は、たくさんの秀れた人物の生いたちと生涯でわれわれに実例をもって教えてくれる。ある人はハングリーからの脱出をバネに向学心を燃やして成功した。また、ある人は学問研究の喜びに目ざめてその道を進み、満足と名誉を手にした。なかには他人には分らぬ自分だけの達成感を得た至福の人もいるが、それらはほとんどの場合、少年の頃の夢や決意や志から発したものである。しかし、その道程は山あり谷ありで時にはまわりの人から思わぬ支援を得たり時には妨害を受けたりするが、その紆余曲折を紹介する谷沢永一さんの筆は的確である。谷沢さんご自身の生涯が向学心そのものの人生だったからだと拝察する。われわれの目をひらかせる好著である。
目次
労を惜しまず、独創の編纂―書誌学者・天野敬太郎
小学生で落語、都々逸を一席―演劇評論家・安藤鶴夫
中学生にして、編集センスあり―雑誌編集者・池島信平
幼少期に養われた、儒教への「信」―財界人・池田成彬
父から離されてこそ、育つ―政治家・石橋湛山
初心定めて、貫徹す―実業家・市川忍
学校不適応にして図書館卒業―作家・江戸川乱歩
大学での勉強が生きる―実業家・大野勇
伊藤博文暗殺をきっかけに―実業家・大屋晋三
旺盛な読書欲、鋭敏な好奇心―ジャーナリスト・大宅壮一〔ほか〕