出版社内容情報
これは私の、私たちの愛の筈だった…。夫の裏切りを疑い、桃子は恐るべき行動に出る。狂暴な愛の行方を問う、慄然きわまる長篇小説。
妻も、読者も、騙される! 『悪人』の作家が踏み込んだ、〈夫婦〉の闇の果て。これは私の、私たちの愛のはずだった――。夫の不実を疑い、姑の視線に耐えられなくなった時、桃子は誰にも言えぬ激しい衝動に身を委ねるのだが……。夫婦とは何か、愛人とは何か、〈家〉とは何か、妻が欲した言葉とは何か。『悪人』『横道世之介』の作家がかつてない強度で描破した、狂乱の純愛。本当に騙したのは、どちらなのだろう?
内容説明
これは私の、私たちの愛のはずだった―本当に騙したのは、妻か?夫か?やがて、読者も騙される狂乱の純愛。“家庭”にある闇奥。“独り”でいる孤絶。デビュー以来一貫して、「ひとが誰かと繋がること」を突き詰めてきた吉田修一が、かつてない強度で描く女の業火。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
401
帯の「騙される」が気になって、まさに一気読み。さすがは吉田さんだわねぇ。夫が不倫、不倫相手を含めて三者対談、修羅場…うーん、デジャヴな感じ(笑)…はさておいて、いや、面白かったです。略奪だからと言って、カルマだなんて私は信じないけど、このオトコにだけは幸せになって欲しくない。でもこういうオトコ、確かにいるし、んでまたモテちゃったりするんだよねぇ。久々の吉田作品、堪能いたしました。2016/02/07
酔拳
258
久しぶりの吉田作品を読んだ。あいかわらず、人の心理描写はとてもうまいな!浮気をされる主人公と浮気をする夫。そして姑。それぞれの心の襞をよく描かれている。 吉田さんは、どうしてこうも、人の心を表現できるのだろうか?とほとほと感心してしまいました。 2017/11/15
風眠
207
結婚して8年。夫が不倫、相手の女が妊娠、そして離婚。章の前後に挟まれる日記は、冒頭が夫の不倫相手の女のもので、後ろが妻のものと思い込んで読んでいたので「あーあっ、自業自得だね。」などと、女の底の浅さを見破った気になっていたけれど・・・途中で何かが違うということに気づいてそして、ああっ!そういうことかっ!と分かったときには、まさにこの「騙したのは妻か?夫か?やがて読者も騙される」という帯の文句、その通りになってる自分がいた。作家の思惑にまんまとハマって騙されたことに快感さえ覚えるような、女と男と女の物語。2013/06/20
なゆ
123
愛人の日記、妻の日常、妻の日記。面白い構成だなぁと思いながら、迫りくる夫婦の危機に先が気になって仕方なくて一気読み。中盤で「あれ?!」と気付いて唸りつつあわてて再度読み返したり。夫の浮気、姑とのチクチクした日常などなど。こういう話の場合には、必ず誰かに肩入れして読んでしまうが、これは不思議とそうはならず客観的に楽しめた。とてもありがちなパターンなのだけど、妻桃子の危うい狂気(?)が〝きっと何かが…〟と思わせてぐいぐい引っぱる。それにしても懲りない逃げ腰の夫にげんなり。そして最後の桃子が切ないわ。2013/06/29
chiru
116
子供のいない主婦の桃子と、桃子の夫の不倫相手のモノローグで構成された小説。 本の帯に『騙される』って書いてあるので心して読んだのに、あまりにも不自然さのない仕掛けに簡単に騙されてしまいました。 桃子の経験のすべては『愛情』というより『戦い』 日常のなかで育つ闇というより、輪廻とか因果応報。 ラストで、桃子がふたりの男性から気付かされる自分の空洞を知ることができたのは、再出発だと思いたいな。 騙され度は満点。 ★5 2018/06/03