内容説明
従来の史家は“北方系の異質な文化”として、解明できなかった四~六世紀の新羅とはどんな国だったのか?天馬塚、味鄒王陵、皇南洞九八号墳等、韓国考古学の成果である大発掘による出土品の数々と世界の博物館の品々とを対比させ、深い関係を検証して、正に新羅文化がローマ文化の所産である一大展観を書中に試みた画期的著作。
目次
なぜこの本を書くことになったか
新羅はどのような国であったか
新羅はなぜ中国と国交をもたなかったか
新羅王の王冠の謎
天馬塚の遺構と遺物が示しているもの
衝撃の皇南洞九八号双墳の発掘
微笑するトンボ玉
ケルトの黄金剣の謎
新羅出土のローマン・グラス
圧倒的な陶製リュトン群
新羅はローマ文化の国だった
ローマから新羅への道
著者等紹介
由水常雄[ヨシミズツネオ]
1936年、徳島県に生まれる。早稲田大学大学院博士課程修了。1968年より1970年まで、チェコ(旧チェコスロバキア)政府招聘留学生としてカレル大学に学ぶ。ガラス工芸史、東西美術交渉史専攻。いろいろな大学で教鞭をとった後、1981年、ガラス作家養成校・東京ガラス工芸研究所、能登島ガラス工房などを開設
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感想・レビュー
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ラグエル
8
一見すると歴史系トンデモ本かと思ったが。新羅王国が隣国中国よりも、北方騎馬民族の文化に浴していた、騎馬民族の文化は「ステップロード」でローマ帝国文化圏に直結している、ということ。帰化王朝・北魏の漢化と同様に、新羅も中国文化に切り換えるときがやってくる。中国文化に染まった文化に違和感を抱かない我々は、そこから昔がどうだったか探らないできた、とこういうわけ。ガラス玉一つからその文化のズレに気づいて丁寧に物証を揃えていった、作者は凄い。2011/08/08
withyuko
2
図書館本 しっかり読んでなくて飛ばし読み。古代のガラスについて調べていて、新羅はある時期まで中国の文化ではなくローマの文化の影響を受けていたことが古墳の出土品で分かった!という本。それ、すご~いと思いました。でも、白村江の戦いの時は、新羅は唐と組んで、高句麗、百済、倭の連合軍に勝ったんだから、ガッツリ中国文化だったんでしょうね。古代の人は、飛行機がない時代なのに、行動範囲がものすごく広かったんですね。2019/08/14
Book shelf
2
中国の影響を受けていたと考えられる朝鮮半島の国々のうち、新羅だけはどうも中国の文化ではなくローマ文化を受容していたのではないか? 古代ガラス研究家であり、自らも製作できる吉水氏の大著。これまで多くの古代ガラス関連の本を書いているが、それらとは少し趣が違う内容となっています。新羅の古墳から出土したガラスはもちろん、伴出物やその意匠、古墳の構造など幅広く考察し、新羅が周辺国と比べていかに特異で、ローマ文化を受け入れていたかを主張しています。 2018/02/25