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光の山

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  • サイズ B6判/ページ数 169p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784104456093
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

放射能の仮置場はやがて瑠璃色の光を放つ山になった。震災後二年、福島に住む僧侶作家が人々のリアルな姿と心情を結晶させた六短編。

震災後二年、福島に住む僧侶作家が描く、魂の叫びと遍歴。震災を深く静かに物語る、短篇集。「ホーシャノー、持ってきていいって、本当かね」汚染土や葉を積み上げた仮置場はやがて、瑠璃色の光を放つ山になった(光の山)。三歳の小太郎は、DNA鑑定を受けに警察署に来ていた。身元不明の遺体の中に父はいるのだろうか(小太郎の義憤)。過酷な運命を必死に生きる人々のリアルな姿と心情を結晶させた六つの短篇。

内容説明

怒涛というしかない奔流が船や家や木や人々を呑み込んで流れ去った。避難所で毛布にくるまる娘は発電所勤務の彼を思う…(あなたの影をひきずりながら)。三歳の小太郎はDNA鑑定のために母親と警察署に来ていた。津波で亡くなった身元不明の遺体の中に父がいないかを確かめるために(小太郎の義憤)。経営していた結婚式場が壊され、除染作業をしながら仮設住宅に住む山口に、久しぶりに結婚式の依頼があったが…(拝み虫)。震災から30年後の福島。汚染された土や葉を積み上げた仮置場を守る爺さんがいた。そこはやがて、瑠璃色の光を放つ山になった…(光の山)。震災後二年、福島在住の僧侶作家が全身全霊をこめて放つ全六篇。

著者等紹介

玄侑宗久[ゲンユウソウキュウ]
1956年、福島県三春町生まれ。慶応義塾大学中国文学科卒。様々な仕事を経験した後、京都、天龍寺専門道場に入門。現在は臨済宗妙心寺派、福聚寺住職。2001年、「中陰の花」で第125回芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

はたっぴ

75
震災から5年。都内の仕事先で帰宅難民となり、民族大移動の一人となって信じられない光景を目にしながらひたすら歩いたあの日。茨城の半壊した実家から両親を避難させたあの日。弟夫婦の子供達への原発の影響に怯えたあの日。福島の隣県でも被災した人々は多く、様々に困難な日々だった。今回、震災関連の図書として福島在住の玄侑さんの小説を読んでみたが、七編の短編はいずれも僧侶である著者の祈りを込めた鎮魂の物語だった。私にとって福島は家族旅行の思い出が詰まった大好きな場所。これからも無関心にならず繋がりを持ち続けたい。2016/03/11

ガクガク

74
玄侑氏初読。東日本大震災をテーマとした6つの短編。氏は福島に住む臨済宗の僧侶でもある。震災後にはマスコミにもしばしば登場されていたようだが、ほとんど記憶がない。震災後を必死に生きる人々の様々な運命と複雑な思いを、日常のささやかな場面から切り取って見せる。その切り取り方は、まさに大震災を共に体験した者でなければ出来ないものだ。中でも表題作の「光の山」は30年後を描いたSF風のお話。他の作品でも取り上げられているが、「放射能の影響は果たしてどこまでなのか」をブラック風に語りつつ、実は本音はかなり真面目かなと。2015/01/23

chantal(シャンタール)

64
もうあれから13年も経つのか。福島で生まれ、福島の寺院の住職でもある作者が描く震災はあまりに現実的で、あまりに悲しい。家族や友人、日常の全てのものを一瞬に奪ってしまった津波。その後の原発事故は長く人々を苦しめる事になる。短編集の最後の表題作「光の山」が伝えたかった事は何だったのか?当時の放射能にしても、ちょっと前までのコロナにしても、何を信じて良いのか、信じる事にも疑う事にも疲れてしまった人は沢山いると思う。将来の希望も見出しにくい今、私たちは何を拠り所に生きて行けば良いのだろう。2024/03/08

八百

32
人は自分の置かれた状況でしか考えることが出来ない、だからそれが悪ければ未来は「まだこぬ」であるし希望は「のぞみまれ」になってしまうのだ。そんななか蚊帳の内からどんな言葉が掛けられるのか、少なくとも私の器では心を寄り添わせることしか術を持たない。所謂震災文学の類いに馴染めない理由はたぶんそこにあると思う。しかしこの短編集はどうだろう、悟りを開いた和尚の眼は現実をこう見るのか、そして明日への糸口をこう開いていくのかと凡夫を平伏させる凄味がある。人を想い寄り添うこと…それはまさにこういうことなのだろう2016/03/14

あやの

29
津波と原発事故に見舞われた浜通り(と、私は読んだ)の人々の生活と心境を切々と描いた短編集だった。それぞれの境遇や放射線に対する考え方の違いから、複雑になってしまった人間関係。互いに気を遣うがゆえに気まずくなったり空気を読んだり。それでもその土地で生きることを選び、でもその決断を自問自答。最近薄れてきたそんな空気感を思い出しながら読了。さすが玄侑宗久さん。2018/04/08

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