内容説明
ぼくが屠畜場で毎日ナイフを持って働いている理由?よし、説明してみよう!キツイ仕事ゆえ、午前中で終業だから、共働きの妻にも幼い息子にも都合がいい。ぼくの体質にも最適なんだ。しかし…各紙誌で話題、爽快な新潮新人賞受賞作。
著者等紹介
佐川光晴[サガワミツハル]
1965年、東京生まれ。北海道大学法学部に進学、在学中に奨学金を得て、一年間南米を漫遊する。大学卒業と同時に結婚、勤めた出版社を一年で辞め、1990年7月から埼玉県内の屠畜場に勤務。2000年10月、「生活の設計」で第32回新潮新人賞を受賞
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感想・レビュー
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kawa
32
大学卒業後入社した出版社が倒産し、次に選んだ職場は屠殺場だった。筆者の職業に関する内省や家庭の様子等を私小説風に描く。取り留めのない展開に好みが分かれるかもしれないがなかなか面白く読むことができた。考えてみれば、自分が選んだ職業であっても、それなりの理屈や理由はつくが、人さまに誇れる確固たるわけがあるわけではないし、私の毎日も取り留めのなさの連続だものな。2022/10/19
はじめさん
26
古本市で買った「牛を屠る」から遡って、著者が文芸の世界に入った受賞作。大学を出て即結婚、会社に入るも生来の汗っかきでワイシャツ、ネクタイ、革靴とか気候に合わないものでは生活できぬと退職、妻は劇団で日本全国行脚の後に教員、子どもも産まれる。語り手たる「わたし」は毎日が半ドン土曜日のと畜場に勤め始めるが、妻の実家は代々の教員家庭だったり、幼稚園の親の職業欄だったりと気苦労は絶えない。大学の同窓生は上から目線で説教。共働きで早く仕事終わるのは便利なんだがと思う主人公の日常。/ リアルを基にしつつ、私小説ではない2017/10/31
suite
18
第32回新潮新人賞受賞作。ご自身の経験に基づいた作品(だが私小説ではない)。タイトル、深い。働くことは、生活を設計すること。世の中に様々な職業があるが、法に抵触するとか、自分や他人の心身を著しく損じるとかといったことのない限りは、その人がその仕事をしている事実を尊重して、その仕事の話を傾聴できるようでありたい、と思いつつ読了。なお、後に書かれた『牛を屠る』には、この仕事をしていたときのことをさらに詳細に綴ってあり、一層の臨場感と佐川さんの矜持が感じられる。2016/02/07
joyjoy
10
仕事を選んだ理由って、結構どうでもいいんだ。というか、その仕事をしているうちに、意味が生まれてくるのかも?でもその意味も、きっと自分にとっての意味でしかなくって、周りから見たらなんじゃそりゃ???かもしれないんだな。偶然、必然、、、偶数、奇数、、、あれ?なんだか割り切れない、みたいな思いもあって、人生も面白くなっていくのかも。2022/10/27
クサバナリスト
6
『牛を屠る』を読み、本作が気になり読んで みたが、『牛を屠る』の方が面白かった。著者の他の作品は、どんなのだろうか?2014/10/05