内容説明
谷崎を読み、その比類なき愚かさ、作家の生々しいかたちに触れる意味とは―今日の文学的風土のただ中で、言葉への情熱と愉悦を語りつくす、気鋭の本格的文芸批評。
目次
序章 愚かさについて
1章 痴と愛―「芸術家」谷崎潤一郎
2章 描写と欲望―「小説家」谷崎潤一郎
3章 擬態の誘惑―作中倒錯人物論
4章 雪子と八月十五日―『細雪』を読む
5章 不着の遡行―新『吉野葛』注
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
zumi
6
谷崎作品の最高の読者が、最高の作家論を書いた。谷崎作品における、エクリチュール・欲望の表れ方や、思想から遠く離れて「芸術」たりえる、ある種の美しさなどに始まり、陰翳美ーー往々にして女性の秘部と結びつき、穢れすらも延長線に浮き上がらせるーーがある意味で「表層の反復」を誘発させ、『痴人の愛』を最高峰の作品たらしめながら、同時に「書くこと」そのものがもつ反復性にも切り込んでいく恐ろしさを解説してくれる。注意したいのはサディスティックな文体とマゾヒスティックな欲望がイマイチ共振できていないこと•••らしい。2014/02/15
nakatta
0
「痴人の愛」「鍵」「瘋癲老人日記」「細雪」「吉野葛」について多く言及しています。2014/04/30