出版社内容情報
若い頃親に反発し家を出た光二だが、認知症の父の介護に迫られる。そして東日本大震災が起こり……。著者の新境地をしめす傑作長編。
ほんとうは自分はこの家と和解していない。まだ還ってきてはいないのだ。父が認知症にかかり、介護が必要となる。高校生のとき親に対する反発から家出同然で上京したこともある光二だが、父と、そして家と、向き合わざるをえなくなる。さらに父の死後、東日本大震災が発生し、家を失った多くの人々を光二は眼のあたりにする……。喪われた家をテーマに著者が新たな展開をみせた傑作長編小説。
内容説明
高校生のとき親に対する反発から家出同然で上京したこともある光二だが、認知症で介護が必要となった父、そして家と、向き合わざるをえなくなる。さらに父の死後、東日本大震災が発生し、家を失った多くの人々を光二は眼のあたりにする…。喪われた家をテーマに著者が新境地を拓いた長編小説。
著者等紹介
佐伯一麦[サエキカズミ]
1959年仙台生まれ。仙台一高卒。電気工などさまざまな仕事をし、84年「木を接ぐ」で海燕新人文学賞を受賞。90年『ショート・サーキット』で野間文芸新人賞、91年『ア・ルース・ボーイ』で三島賞受賞。2004年『鉄塔家族』で大佛償、07年『ノルゲNorge』で野間文芸賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いつでも母さん
100
とてもとても悲惨ではない。どこにも救いがない・・訳ではない。盛り上がりがあるのでもない。これは佐伯一麦作家の私小説なのだから、第三者の私がどこに、だれに心を砕くことが出来るだろう。共感して欲しくての小説ではない。時系列や人間関係に気持ちが縦と横に行き来しつつ読了に至った。まるで咽喉に小骨が刺さって取れないようだ。気丈な母の『悪いけど家まで送ってもらえるかねえ』の言葉がどんより重く感じたのは何故だろう。しかし、出来た奥様だなぁ・・2016/09/15
ゆみねこ
55
年老いた父の認知症がきっかけとなり、老々介護の母を助ける作家早瀬とその妻。地元にお住まいの佐伯さんの実体験を元に書かれています。去年の暮れに父を見送ったばかりの私にも、身につまされるようなことが多々。作者と同年代の老親を持つ人には共感できる本ではないでしょうか。今、この本のその後を読売新聞で「空にみずうみ」として連載中です。2014/08/11
ともくん
33
アルツハイマーに罹った父。 母を見ると、鬱病が発症してしまう僕。 まったくこんな子、産むんじゃなかった─ 昔の母の言葉と、悪夢が蘇る。 兄姉と自分の確執。 兄姉と両親の確執。 自分と両親の確執。 現在と過去の折り合いをつけ、父の最期を迎えることができるのか。 2023/08/16
ねこまんま
33
ああ、私小説だったんですね。だったら仕方ないか。。。という印象。確執があるのも、良くできた嫁なのもわかる。母が毒親なんだけど、父の影が薄いのよ。父の介護の話なのに。兄姉が実家に寄り付かない、もっと深いところの話とか、光二の離婚の背景とか、興味あったんだけどなあ。そうすると、介護の焦点がぼやけちゃうのかもしれない。まあ、心を病むほどの実家の面倒事なんてほっときゃいいのに、そうもいかないのが辛いところ。親だしねえ、最終的には仕方ない、ってことになっちゃうわ。それにしてもこの嫁さんは健気だわ。2016/03/08
百太
25
親の介護、家族との関係性。佐伯氏の私小説なのか かなりリアルに感じられる。生まれも育ちも宮城県なもので・・・母親が拘る風習も、この物言いや考え方も、とっても身近で・・・。2014/04/29