私の恋人

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  • サイズ B6判/ページ数 126p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784103367321
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

旧石器時代の洞窟で、ナチスの収容所で、東京のアパートで、私は想う。人類の旅の果てに待つ私の恋人のことを。話題の三島賞受賞作!

時空を超えて転生する「私」の10万年越しの恋。旧石器時代の洞窟で、ナチスの収容所で、東京のアパートで、私は想う。この旅の果てに待つ私の恋人のことを――。アフリカで誕生した人類はやがて世界を埋め尽くし「偉大なる旅」一周目を終える。大航海時代を経て侵略戦争に明け暮れた二周目の旅。Windows95の登場とともに始まった三周目の旅の途上で、私は彼女に出会った。

内容説明

遥か10万年前、クロマニョン人だった私は、並外れた想像力でその後の世界情勢や人類の営みを予見し、洞窟の壁に書きつけながら、いつしか未来に息づくひとりの女性を思い描いていた。その後、第二次世界大戦前のベルリンに生まれ変わった私は、ユダヤ人であるがゆえに時代の波にのまれ、ナチスの強制収容所の独房で、太古からの記憶を反芻し、今でもここでもない場所から私の身を案じている、たまらなく可愛い私の恋人のことを想い続ける。そして、現代日本にふたたび生を受けた私、井上由祐の前にひとりの女性が現れた―。はるかなる人類史と、その先に待つ未来と驚きあうかつてなく壮大でどこまでも親密なラブストーリー。第28回三島賞受賞作。

著者等紹介

上田岳弘[ウエダタカヒロ]
1979年兵庫県生まれ。早稲田大学法学部卒業。2013年、「太陽」で第四十五回新潮新人賞を受賞し、デビュー。2014年、「惑星」が第百五十二回芥川賞候補になる。2015年、『私の恋人』で第二十八回三島由紀夫賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

447
本書は三島賞受賞作だけあって、若い作家の意欲作という感じはよく伝わってくる。ただ、多分に観念的であり、小説としての妙味はいささか薄いように思われる。人類の長い歴史を「行き止まりの人類の旅」として捉え、10万年前のクロマニヨン人の時代の1周目、そして現代文明の時代の2周目、さらには来るべき新たな3周目を模索するといった試みである。そうした思考の方法はわからないでもないが、主人公の井上由祐に感情移入することもできず、共感も寄せにくい。小説でありながら、他者の開陳する説を聞いているかのような印象なのである。2019/12/18

starbro

150
又吉直樹の『火花』と同時ノミネートで三島由紀夫賞を受賞した『私の恋人』を読みました。上田岳弘、初読です。10万年前の旧石器時代~第二次世界大戦~現代と時空を超えて転生する世界観は興味深く感じました。クロマニヨン人とネアンデルタール人の恋と日本人と白人女性の恋に通ずるものがあるのかは微妙ですが・・・人類が増殖し過ぎて地球を滅亡に導かないように、ジェノサイドの志向はDNAに組み込まれ続けているのでしょうか?著者の次回作に期待したいと思います。2015/10/11

ケンイチミズバ

129
輪廻転生する私は歴史を一巡して見てきた。原始時代から再スタートするもクロマニオン人たちにネット社会の話をしても通じないし、表現のしようもない。仕方なく洞窟の壁に漠然とした仕組みを落書きするが、後世に大発見されることも、古代に宇宙人が来たなどのニュースは今のことろない。合理化で強者が生き残り弱者は消え去る。人間は殺す対象が人間に近いとかわいそうが起きるが、虫なら別に、猫ならかわいそう。人間なら犯罪だが、政治的洗脳やナチスの分業による作業にも見ての通り罪悪感が軽減されるとやってのけることもある。それが人類だ。2019/03/04

ケイ

120
すらすら読めるのに、なかなか世界に入っていけなかった。10万年前の次が第二次大戦、で今だから、時の感覚がわからなくて。前作からのつながりがあるみたい。私の恋人は、私が恋する人。ともすれば、誰とでもする人だったのに、彼女への自分からの垣根を高くしてしまっている。それは、恋する者が勝手に作り上げる障壁。ただ、抱きとめて離さなければいいのに、何万年とか悩んでなくて…、と私は思う。2016/03/14

かみぶくろ

108
雑誌で読んだ「惑星」に続いて二作目の上田作品だが、この作家の持つ想像力と筆力には驚くばかり。売出中の作家の中で一番好きかもしれない。二人称三人称を織り混ぜた人類そのものを俯瞰する視座からの語りは、高い技巧が求められる以上に、そうしなければ語り得ないという強い意志が内在してそう。歴史の考察や現代の諸課題に対する認識も、素人目には極めて的確に思える。そして「超越的なもの」であるはずの主人公が恋に落ちるっていうオチがなんとも爽快だ。全ては妄想=主観的認識の問題に過ぎないという余白を残しているのかもしれない。2015/07/26

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