慈雨の音―流転の海〈第6部〉

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  • サイズ B6判/ページ数 413p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784103325154
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

御成婚や安保に湧く昭和30年代。松坂熊吾の駐車場経営は軌道に乗り、息子伸仁が思春期を迎える中、数々の因縁があった海老原太一が自殺。新たな影が落ちる。

内容説明

皇太子御成婚や日米安保、東京オリンピックのニュースに沸く昭和三四年、松坂熊吾の駐車場経営は軌道に乗り、新事業に手を広げていく。妻房江も日々の暮らしに明るい楽しみを見出し、中学生になった息子伸仁は思春期を迎える。かたや北朝鮮へ帰還する人々との別れがあり、戦後より数々の因縁があった海老原太一の意外な報せが届く。大阪の町に静かな雨が降る―。人は真摯に生きるとき、諍いの刃を受ける。しかし己れが春の風となった微笑めば、相手は夏の雨となって訪れ、花を潤す。戦後の時代相を背景に、作者自らの“父と子”を描くライフワーク第六部、大阪・隆盛編。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

遥かなる想い

140
昭和34年前後の大阪を描く。宮本輝が自分の父を描いてきたこのライフワークとも言える「流転の海」も第六部。出だしの頃の切れはないが、だんだん優しく温和な表現に変わってきている気がする。時代背景としての北朝鮮帰国や経済成長の息吹は感じられ、なぜか懐かしい。 2011/09/25

ケイ

72
伸仁が思春期の入り口にかかり、成長著しい巻。熊吾はモータープールの管理人業と共に中古車の商売も見据えられるようになる。糖尿病も再び悪化するが、まだまだ元気だ。房江はお酒が増えたり、中年の疲れのようなだらしなさが出てきたようだ。北朝鮮に帰国する人達が新潟から出る船に乗るために、大阪駅から集団で随分と物々しい中を出発したのだなと驚いた。皇太子の結婚、オリンピック準備のための出稼ぎなど、当時の世相と絡めてあるので、熊吾達の生活も想像しやすい。早く次を読みたいが一体いつになるのだろう。2014/03/08

それいゆ

64
昭和34年4月、小学校から帰るとテレビが届いていて、村田英雄が王将を歌っていました。皇太子殿下ご成婚パレードの数日前でした。この頃テレビがあるのは散髪屋だけでした。月光仮面やプロレスの放送時刻になると人が押し寄せていました。秋には伊勢湾台風が襲来し、屋根瓦が飛んでくる中を塀に板を打ち付けました。全校朝礼で校長先生が新潟から北朝鮮に帰る児童を紹介してくれました。くぎで陣地取りをする遊びは「ぶったて」とよんでいました。伝書鳩を飼っている子はとても羨ましかったです。私と伸仁の日常は重なる部分がいっぱいです。2014/06/18

ジェンダー

58
長いように思うけれどあっという間に読んでしまったという感じ。人間って不思議な物で自分が不遇に感じている時に悪い事を引き寄せてしまう物かと思う。でも東京オリンピックの時代を知らないので時代背景もしっかり書かれているので歴史の勉強にもなり楽しく読めます。どんな時でも焦って事を急いでは行けないし、変に言い返したりするとケンカの元になる。主人公の家族も不思議な物で主人公の好き勝手して引っ張られているようになってはいるけれど家族愛という物はしっかりある。普通別れてても不思議はないけれどなくてはならない物だと思う。2014/08/27

B-Beat

35
◎シリーズ第6作。作者の自叙伝ともいうべき物語も第1巻の昭和23年に生まれた子供は中学生になり「この子が20歳になるまでは死ねない」とした主人公は62歳の昭和35年までたどり着いた。この巻もこれまでと同様に主人公家族の激動の時代を真摯に生き抜いていく姿や縁ある人々の盛者必衰な様が淡々と描かれていた。ただこの巻の結末の「名刺」の人物についてはもう一度第1巻から読み直さないと作者の意図を読み切れなかったような。単に自分の記憶力と読解力が足りないということかもしれないけれど。 2012/10/25

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