吾妹子哀し

吾妹子哀し

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  • サイズ B6判/ページ数 258p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784103323099
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

内容説明

杏子に銃口を向けるものがあれば、お前はそれを遮って立てるかと、その折々に杉は自分自身に問いかけたものだった。今また杉は銃口の前に立っている。銃にこめられた弾丸はアルツハイマー型痴呆症だ。―下駄箱に並んだ化粧品、食品棚に詰めこまれた靴やスリッパ、床に落ちた排泄物、徘徊…。哀しくもときにユーモラスな介護生活に、若き日の熱烈な恋愛の記憶が輝きをもって立ち現れる。「究極の恋愛のかたち」と、選考委員各氏の絶賛をあびた川端賞受賞作と続編を収録。

著者等紹介

青山光二[アオヤマコウジ]
1913年、兵庫県生まれ。三高在学中に織田作之助を知り、東大文学部在学中に創作を開始する。その後、任侠小説で活躍。『闘いの構図』(平林たい子賞)、京都学派の異端児土井虎賀寿を描いた『われらが風狂の師』で読者を得た。「吾妹子哀し」で第二九回川端康成文学賞を受賞
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

hit4papa

26
アルツハイマーを発症し、徐々に記憶を亡くしていく妻。身の回りの事もままならぬようになっていく彼女を支えるのは齢90歳の夫です。タイトル作は、著者の年齢でリアルタイムに書かれたのですから、私小説になるのでしょう。老老介護の現実...というほどの深刻さはここにはありません。壊れていく妻に対する優しい眼差しは、むしろ恋愛小説の趣きです。仲良きことは美しきかな。しかしながら、二人の出会いを振り返る「無限回廊」で、主人公が放蕩の限りを尽くしていた男だったことがわかります。ちっとも美しくない...【川端康成文学賞】2018/05/09

さざなみ

3
知人に老老介護をされている方が発生したのを機にこの本を読んでみたが、目的外の恋愛小説といってもよい内容でした。川端康成賞を受賞した短編小説である主題の「吾妹子哀し」に関連した「無限回廊」には青春時代にさかのぼった二人の恋愛模様が描かれていたが、京都寺町通りの「スター食堂」や梅田の阪急百貨店の名前が出てきて、自分自身の淡い想い出と重ね合わせほんのりとしました。2017/12/08

矢田絵美里

3
★★★☆☆ 重い内容でした。私には理解出来ないこともありました。まぁ、男女関係ですね…。難しいです。2009/08/16

okatake

2
認知症を患った妻と作家との日々を綴った書。著者の実体験を通したもので、実感が伴っている。川端康成賞受賞作とその続編である。淡々とした描写の中に妻の介護の哀しさが見受けられる。2013/08/27

CBF

1
(★★★★☆) 妻に銃口を向けるものがあれば、お前はそれを遮って立てるかと、その折々に自分自身に問いかけたものだった。今自分は銃口の前に立っている。銃にこめられた弾丸はアルツハイマー型痴呆症ー。認知症介護を描いた他の作品では、以前『恍惚の人』を読んで、介護の壮絶さに圧倒されて恐怖を感じた記憶があるけど、この作品では、夫の妻に対する愛情がメインテーマになっている分、切なさや哀しみが印象に残った。 『あの愛は記憶の中にあるだけかというと、そうではない。今も愛は生きている。』2017/10/15

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